2024年12月29日( 日 )

売上5,000億円達成のカギは物流・不動産 M&Aで天神再開発原資稼ぐ(後)

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西日本鉄道(株)

 長期ビジョンで2025年に売上高5,000億円達成を目指している西鉄。達成には今までにないスピード成長が求められる。域外でも稼ぐ国際貨物や不動産事業が達成に向けたカギを握るが、まちづくりの中核をなすホテル事業の成長も欠かせない。

グランドホテルと「国際高級ホテル」は競合せず

福岡ビル

 西鉄は隣接地のグランドホテルを代替地に移す必要に迫られたはずだが、倉富社長と林田氏は建替えでも「現在地がベスト」と言い切る。これは、ホテル建設ラッシュが続く福岡で、国際的な高級ホテルとグランドホテルは競合せず、むしろ相乗効果が生まれると見ていることがわかる。西鉄は大名小跡地隣接のオンワード樫山ビルを購入して体制を整えた。獲らねばならない案件だが、仮に他社が落札してもデザインを描き直して対応するはずだ。グランドホテルの今後が決定する3月の大名小跡地の優先交渉者が決定した後になる。

 来年4月、民営化される福岡空港の運営は、西鉄を含む地場連合ら3陣営に絞られた。優先交渉権者が決定するのは5月。国交省によると16年度の福岡空港の営業収益は約370億円。九電以外の連合相手や数は不明だが受託業者全体に入ってくる金額はこれが目安になる。いずれにしても落札できれば業績に反映していく案件だ。

 西鉄が手がけるもう1つの大型物件「福ビル」の建替えは今年中にスケジュールが決定する見通しだが、竣工までには6~7年は要する。25年の5,000億円に貢献するのは難しい。

増収期待膨らむも 不可欠な投資原資確保

 国際貨物の近年の年間投資額は10億円に満たない。物流倉庫は必要だが業務の主力は手配業務で、鉄道やホテルなどの装置産業と異なり投資額は抑えられる。国際物流をスピード展開できる一因だ。

 一方で、大名小、福岡空港とも落札した場合は巨額の投資が必要になる。大名小はグランドホテルまで、空港は福岡空港ビルディング建替えの株式購入代金と一時金だけで650億円。連合で分担しても巨額の投資が必要となる。西鉄の過去5年間の年間設備投資額は最大350億円。落札に応える投資額を確保するために一層の利益確保が必要となる。

 不動産事業以外では大幅増収が期待される国際物流を含めて高い利益を上げる事業はない。やはりホテル事業への期待は大きい。稼働率を確保すると出店した部屋数分だけ計算できる。グループにとっても計画通りに店舗数を増加させることが必須となる。

 近年とくに規模の大小や業態に関わらず優秀な企業と連携や異業種への参入が進められている。手堅い社風を維持しながらも柔軟に外部の知恵や力を活用して成長しようという姿勢がうかがわれる。まずは、来期にあと300億円上積みし4,000億円の壁を確実に突破することが7年後の5,000億円達成のカギになる。

(了)
【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:倉富 純男
所在地:福岡市中央区天神1-11-17
設 立:1908年12月
資本金:261億5,729万円
売上高:(17/3連結)3,582億7,300万円

 
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