2024年12月05日( 木 )

迫りくる巨大地震・火山噴火「リング・オブ・ファイア」の脅威(中)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 このところ世界各地でマグニチュード7を超える巨大な地震が相次いで発生している。過去100年の世界における巨大な地震の発生頻度を調べてみると意外な事実が判明する。それは1900年から2000年まではマグニチュード6を超える地震の数は年間10件を超えることがほとんどなかった。ところが01年以降、今日に至るまで多い時には年間70件、平均すると30件以上もの巨大な地震が発生している。

警戒される白頭山

 いずれにせよ、日本に近い朝鮮半島でも中国との国境沿いにある白頭山の噴火の予兆が明らかとなり、中国政府は立ち入り禁止措置を発令した。韓国では「北朝鮮の地下核実験の影響か」との声が高まる一方だ。たしかに、気象観測衛星の画像を見ると、北朝鮮の核実験場周辺はもとより白頭山の地形にも変化が見られる。各国の地震学者によれば、「人類史上最大の火山噴火の可能性がある」とまで警戒レベルが高くなっている。

 実は、白頭山は100年に一度の小噴火と1000年に一度の大噴火を繰り返してきた。
 前回の小噴火は1903年のこと。ということは、とっくに小噴火の周期を超えており、いつ噴火があってもおかしくない。しかも、前回の大噴火はちょうど1000年ほど前の話。

 日本では平安時代で、当時の記録によれば、日本海側を中心に大量の火山灰に覆われ、農業は壊滅的な被害を受けたという。農業だけではなく、交通網も寸断され、多数の死傷者が出たのである。

 その白頭山が2015年からは小噴火と大噴火が重なる重大警戒時期に突入しているわけだ。北朝鮮は06年、09年、13年そして17年と核実験を実施しているが、その都度、周辺で確認される地震の規模は大きくなっている。北朝鮮の核実験は白頭山の噴火や巨大地震を誘発していると思わざるを得ない。

 これは韓国、中国のみならず、日本や欧米の地震学者の一致した見方である。北朝鮮も韓国も避難訓練を繰り返しているが、日本は残念ながら対応が鈍いまま。いったん爆発すれば、たちどころに日本はその火山灰に覆われる危険があり、交通手段もマヒする恐れが大きいにもかかわらずだ。日本政府は「いたずらにパニックを引き起こしたくない」との判断をしているようだが、国民の生命、財産を守る手立てを講じる責任を放棄していると言わざるを得ない。であるならば、そんな心もとない政府には頼らず、食糧の備蓄や避難場所の確保など、自主防衛するしかないだろう。

噴火による地球寒冷化

 世界の科学者たちの観測や予測は「火山噴火が数カ月間続けば、大量のガスや火山灰が大気圏に広がる。その地球におよぼす影響は計り知れない」というもの。最も危惧されることは、そうした火山灰の形成する帯が太陽光を反射し、「地上に太陽光が到達しなくなる」ことだろう。そうした事態になれば、地球は温暖化から一変して寒冷化することになる。

 もちろん、そうした地球寒冷化に至るには大量の火山灰が吹き上がることが前提で、今のところは予測がつかない。加えて、懸念されているのが噴火の影響で「降水パターンが大きく変化」することである。これまで、欧米でも中国でも温暖化対策の一環として「人工降雨技術の研究開発」にしのぎを削ってきた。

 たとえば、火山噴火を人工的に模倣する技術も実用が進んでいる。要は、太陽光を部分的に遮断するという発想に他ならない。先に紹介した1963年のアグン山の噴火では、その後1年間で地球の気温が0.1から0.2度低下した。今回も同様の影響があり得るわけで、そうなると2018年から20年にかけて、世界の気温は急速に低下し、水害の拡大もあり得ると予測される。

 そんな懸念を抱いていた矢先の18年1月23日、群馬県西部にある草津白根山が突然噴火した。噴火口に近いスキー場で訓練中の陸上自衛隊員やスキー客が噴石の直撃を受け、死傷。予兆がなかったため、避難指示も出せなかったという。過去1,000年以上、大きな噴火の記録がなく、気象庁の監視対象からも外されていた。

 とはいえ、14年の御嶽山の噴火でも警報が出ない中、58人が犠牲となった。その時の教訓が生かされなかったのは残念である。再噴火の恐れも指摘されている。噴火が続けば、雪崩や泥流のリスクも高まる。日本は地震・火山大国でもある。防災体制の再検討が急務であろう。

予断許さぬ太平洋沿岸

 実は、地震や火山噴火が近年、太平洋沿岸諸国で頻発しており、その集中度は9割に達する。「リング・オブ・ファイア」と呼ばれ、南北アメリカ大陸からアジア・オセアニアに至る太平洋側一帯では火山の噴火が止まらない。

 白根山の噴火と時を同じくするように、フィリピン最大のメイオン山(ルソン島)も噴火。噴煙は700m上空まで達し、溶岩が流れ出し、付近の住民5万6,000人が避難を余儀なくされている。1,200人が生き埋めになった1814年以来の大爆発という。とはいえ、メイオン山は過去500年の間に50回以上の噴火を繰り返しており、住民も避難勧告には慣れっこになっているようだ。

 日本では報道されていないが、2018年に入り、パプアニューギニアのカドバル島でも17世紀以来という大噴火が起き、1,500人が避難中だ。そのため、オーストラリア政府や国際赤十字が緊急援助に追われている。

 そして、1月23日には北米アラスカ沖でマグニチュード7.9の巨大地震が発生した。
 こちらは1964年のマグニチュード9.2を記録した時以来の大地震。そうこうしていると、何とアメリカのイエローストーン国立公園内でも巨大噴火の予兆が出始めたというではないか。NASAによれば、「イエローストーンの火山噴火は小惑星の地球衝突より確実で、より大きな被害が想定される」という。

 日本に近いロシアのカムチャッカ半島でもクルチェブスコイ山が2016年以降、噴火を繰り返している。また、冬季オリンピックが間近に迫る韓国であるが、すでに述べたように、北朝鮮と中国の国境にまたがる白頭山はここ数年、群発地震が発生しており、いつ巨大噴火が起きるか予断を許さない状態が続いている。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
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