2024年12月23日( 月 )

愚の骨頂、ウクライナと南シナ海問題を同列視した安倍首相(4)

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副島国家戦略研究所(SNSI)中田 安彦 氏

 最近になって日本国内だけではなく、アメリカ国内で中国の南沙諸島の埋め立てが大きく話題にされるようになった。きっかけになったのは、CFR(外交問題評議会)がこれまでのスタンスから45度右旋回したような報告書(Revising U.S. Grand Strategy Toward China)を出したことも関係しているが、直接的なものは他にある。それは5月下旬にシンガポールで行われた国防大臣会談(シャングラリア・ダイアローグ)のちょうど1カ月前、5月上旬にCSISが大々的に公表した、中国の南シナ海埋め立ての模様を撮影した写真集である。

sora この膨大な写真のなかには中国と領有権を争っているベトナム側が行っている埋め立て写真も含まれており、一見、アメリカとしてはバランスをとっているように見える。しかし本質はアジア太平洋地域と米国内で、中国脅威論を宣伝することである。これらの写真はCSISが仕掛ける対中包囲網の形成とそれに関連する軍需ビジネスの宣伝のためのものであり、軍人が関連予算をもぎ取るための宣伝文書のたぐいだと理解した方がいい。
 米中はいま、お互いに軍拡をしたがっている、米中の軍関係者にしてみれば予算獲得の格好の材料になったわけである。シャングリラ会合の直前に中国が国防白書を発表し、特に「米中の軍事衝突」に言及したのもその現れである。軍隊というのは官僚組織だから、予算を獲得するために議会に対して安全保障上の脅威を煽る必要があるのだ。米中はそのことをお互いわかったうえで軍拡競争を演出している。これは双方が状況をしっかり管理しきれているのであれば双方の利益になることだ。

 ただ、その米中の半ば「ヤラセ」のような南シナ海の軍拡競争に巻き込まれてしまうのが、我が日本だ。ここで話を先ほどのサミットに戻すことにする。安倍首相は、サミットに出向く前にウクライナを訪問したということは書いた。それは単に欧米社会の対ロ制裁路線にたいして足並みをそろえるという意味だけではない。日本経済新聞は次のように9日の朝刊で解説している。

首相、中国包囲網へ欧州説得
南シナ海・アジア投資銀 「日米同盟」後ろ盾

2015/6/9付 日本経済新聞 朝刊

 【エルマウ=佐藤理】主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が首脳宣言に中国への強いけん制を盛り込んだのは、安倍晋三首相にとって一定の成果だ。中国の海洋進出に警戒感を強める米国を後ろ盾に欧州勢に働きかけ、G7を舞台に安全保障と経済で対中国包囲網づくりを進めた。日本で開く来年の「伊勢志摩サミット」に向け、G7の結束を維持できるかが課題になる。

 「大規模な埋め立てを含む現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対する」。首脳宣言には中国の行動を強くけん制する文言が入った。

 今回のサミットで首相は安保と経済の2つの対中包囲網づくりを狙った。ポイントは経済面で中国に近い欧州をどう取り込むかだった。

■同じ危機感あおる

 安保では南シナ海での中国の岩礁埋め立てへの非難を首脳宣言に盛り込むことを目標とした。中国の行為を黙認すれば、沖縄県の尖閣諸島でも国際法を無視した行為を許しかねない。だが当初、欧州の関心は薄かった。「欧州には遠い極東の話だ。世界第2位の中国経済との関係維持を考えると触れたくないのが本音」(首相周辺)だった。

 テコとなったのは欧州の安保の生命線、ウクライナ問題だった。「南シナ海はウクライナと同じ問題だ。自由や法の支配、領土の一体性が重要だ」。首相は昨年のサミットから各国首脳にこう訴え続けた。

 中国の強引な手法を看過すれば、クリミア半島を武力編入したロシアの容認につながる。理念や価値観で攻め、ウクライナと南シナ海を同列視することで、首相は欧州を包囲網に引き込んだ。(以下略)

 以上のように、上の記事では、「ウクライナと南シナ海を同列視することで、(安倍)首相は欧州を包囲網に引き込んだ」というふうに書いているが、これはあまりにも「危険」な同列化である。なぜならば、ウクライナと南シナ海の問題は性質の上でもまったく違うからだ。

(つづく)

<プロフィール>
nakata中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

 
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