愚の骨頂、ウクライナと南シナ海問題を同列視した安倍首相(1)
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副島国家戦略研究所(SNSI)中田 安彦 氏
安倍晋三首相が、先週末から行われていた、ドイツのガルミッシュ・パルテンキルヒェンという保養地の近くで開催された、G7サミットでどういう動きをしたのか、ということが非常に重要だ。
日本のマスメディアでは、まるで安倍首相がサミットの主役であったかのように書いているが、これは大いに疑問だ。まず、安倍首相の旅程を振り返ってみよう。まず今回の欧州訪問に当たっては、ウクライナに出向いている。ここで現在の大統領であるポロシェンコ大統領と会談している。同大統領は、国内においては更に過激なネオナチ勢力の支援を受けていると言われる、ヤツェニュク現首相や右派から突き上げを食らう立場にあり、国外に向けてはウクライナ東部の紛争に介入しているロシアのプーチン大統領と交渉しなければならない。いわば板挟みの立場にある。安倍首相は、ウクライナを訪問し、すでに約束してあったウクライナに対する経済協力(18.4億ドル)の実施を確認している。ウクライナ東部をめぐる内戦では双方が停戦を順守し、ウクライナ東部に自治権を与えるという内容にミンスク合意によって定められた合意が存在する。それでも東部では戦闘が続いている。だから、安倍首相は、今回、日本は「ロシアとウクライナと両方との関係を重視する」という立場の「誠実なる仲介者」という立場をとって、ウクライナ和平に関与する姿勢を見せた。しかし、もともと安倍首相は北方領土問題を巡って、ロシアのプーチン大統領との間の関係を重視しようとする立場にあった。ところが、ウクライナのクリミア半島を去年、ロシアが独立させてしまった。つまり、第二次世界大戦後、行われてこなかった「力による領土変更」が行われてしまったわけだ。そこで、アメリカやイギリス、ロシアと国境を接している東欧諸国の一部は態度を硬化させ、欧州連合も巻き込んでの対ロ制裁という流れになっている。この先進国の間での合意があるので、アメリカの顔を伺う安倍政権としては、あまり露骨にロシアとの関係改善が出来ない状況だ。日本も対ロ制裁に参加している。
ここで安倍首相がウクライナを訪問したのは、この国際社会(といってもG7各国だけ)の声を代弁することで、日本がアメリカの自由主義勢力の同盟、「自由と繁栄の弧」の民主化拡大路線の一翼を担っていることをアピールするためである。これはロバート・ケーガンという米国のネオコン派の論客の打ち立てているシナリオに沿った動きだ。
そもそもウクライナ政変を仕掛けたのは、このケーガンの奥さんでもあるヴィクトリア・ヌーランド国務次官補とジョン・マケイン上院議員であることは、ロシア側のメディアでよく報道されている。そして、マケインは中東の民主化運動やイスラム国の台頭(シリアのアサド政権に対抗するイスラム過激派の比較的穏健派の育成のふりをしてイスラム国を育てた)にも裏で暗躍していたことはすでによく知られた事実になっている。安倍首相は、イスラム国による2人の人質事件が起きているさなかの今年1月にイスラエルを訪問している。この中東訪問でもエルサレムにて、なぜかマケインら米議員団と会談している。(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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