愚の骨頂、ウクライナと南シナ海問題を同列視した安倍首相(3)
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副島国家戦略研究所(SNSI)中田 安彦 氏
安倍政権が抱える大きな問題の一つが沖縄の普天間飛行場の移設問題である。去年の翁長雄志知事の誕生以来、沖縄においては、従来の基地反対運動を主導してきた左派だけにとどまらず広い大衆の声を集めて、したたかに県外移設を目指すべく、本土政府と渡り合おうとする「オール沖縄」路線がある。これに対して、菅義偉官房長官は安倍首相の意図を踏まえて、沖縄に対する経済支援をカードに辺野古移設を強硬に推し進めようとしている。
沖縄の地理を見れば、中南部は比較的開けた土地が多い一方、県北部はいわゆる「ヤンバル」と言われた森で覆われており、開発度合いにおいても那覇市や沖縄市に比べると立ち遅れている。県北部だけをみても名護市は西側のリゾート地区、東側の辺野古を含む大浦湾周辺では開発度合いが違う。沖縄財界は従来、基地を開発の遅れた名護市東部に移転し、普天間の返還された土地を開発して産業振興につなげようとして考えていた。要するに危険施設、迷惑施設である海兵隊基地は沖縄県北部に押し付けて県全体での繁栄を目指そうという路線だった。これが辺野古埋め立てを許可した仲井真弘多前知事の路線だった。
しかし、今回の「オール沖縄」では、沖縄のリゾート開発企業グループとして地元では有名は「金秀(かねひで)」が中心になり、本土に対抗する意欲を見せて辺野古基金を設立し運動を動かしているのが特徴だ。沖縄は基地に依存している限り、いつまでも補助金漬けになるという意識から、観光立県を目指して中国やアジアの観光客の消費を拡大したり、先端的な研究開発機関を誘致したりしている。最終的にはシンガポールのような金融センターを目指すという構想のようだ。オール沖縄路線は左派や共産党から自民党だった穏健保守派まで幅広く、沖縄の経済的自立のために団結してアメリカと日本政府と交渉しようとするムーブメントである。それに対して、菅官房長官は名護の移設先の辺野古地区周辺の区長らを抱き込んで地区の振興策を餌に基地移設を受け入れさせようとしている。辺野古移設撤回を目指して動いたかつての鳩山政権は無残に米国と日本の官僚機構によって潰されてしまったことは記憶に新しい。アメリカ政府は、鳩山政権以後の民主党政権は抑止力維持を理由に従来の辺野古移設案を受け入れてしまったことを踏まえ、いまさら、日本側と再交渉するのは「もはや労力の無駄だ」という判断になっている。この路線をマイケル・グリーンやリチャード・アーミテージのようなジャパン・ハンドラーズが後押ししている。
6月上旬に安倍晋三の訪米から半月たって、翁長知事がハワイとワシントンを訪問し、辺野古移設撤回の声を米国で訴えるロビー外交を行った。が、安倍首相らの根回しが効いたのか、翁長知事との面会に出てきたのは国務省や国防総省の日本部長レベルの下っ端だった。この問題で権限を持つ、ダニエル・ラッセル国務次官補には会うことはできなかった。マケイン、グリーンには会うことが出来たが、彼らは翁長知事の側に歩み寄ることはまったくなかったようだ。
この背景には日米の安全保障ロビーの強固な団結がある。アーミテージら、ジャパン・ハンドラーズにしてみれば辺野古に海兵隊の新基地を作らせて、海兵隊と陸上自衛隊の共同使用という形にしてしまえば、その基地の運用などのコンサルティング、新しいミサイルの導入などで非常にビジネス上都合が良い。アーミテージらCSISは2013年のアーミテージレポートの最新版で、日本政府に対して「集団的自衛権の行使容認」を含めて要求しており、その報告書の別表(アネックス)では、アーミテージ自身の安全保障ビジネスに役立ちそうな要望をつらつら並べている。
そして、アーミテージレポートでは更に、南シナ海の対中牽制における日米協力を要望書の項目の一つとしてあげている、と9日の「東京新聞」が一面で書いている。(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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