愚の骨頂、ウクライナと南シナ海問題を同列視した安倍首相(6)
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副島国家戦略研究所(SNSI)中田 安彦 氏
前回の記事で示したように、平時の哨戒監視のつもりで南シナ海に、日本の自衛隊がアメリカと分担で自衛艦を派遣した場合、最悪の場合には南シナ海で中国の艦船と衝突させられるという可能性もある。同じく、読売9日の政治面の記事「安保法制シミュレーション・重要影響事態」はその流れを説明している。
これを読むと、今回の安保法制は中東での機雷掃海という論点は国民の目をめくらますためのダミーであり、本筋は南シナ海の中国包囲網であるということがよくわかる。先の国会質疑について報じた読売の記事、さらに、集団的自衛権や南シナ海の問題について対日要求を行った「アーミテージレポート」についての東京新聞の記事が更にそれを裏付けている。ここまでの話をまとめると、安倍晋三首相は、ジョン・マケイン上院議員やアーミテージ元国務副長官らにたぶらかされて、南シナ海の守りを固めさせられることになる。しかし、東シナ海の問題、尖閣問題は日中の領土をめぐる争いであるのに対して、南シナ海の方は日本がまったく当事者ではない領有権争いである。
確かに最近は中国の埋め立てが一方的に進められてはいるものの、元はといえば中国がまだまだ台頭していない時代に、フィリピンとベトナムが一方的に領有権を既成事実化させた側面もある。
また、今回埋め立てが問題になっている南シナ海のファイヤリークロス岩礁については、1988年のスプラトリー諸島海戦(赤瓜礁海戦)で、中国はベトナム軍から攻撃したうえで奪っている(つまり、以後は中国が実効支配している)という歴史的経緯がある。88年から実効支配しているということはあまり日本では報道されていないし、ベトナムやフィリピンも中国同様、南シナ海では積極的に領有権を主張している。
確かに中国が一方的に主張している南シナ海のほぼ全体を中国領海とする、牛の舌のような形をした国境線、いわゆる「九段線」は明らかに問題がある。しかし、この問題は単純に中国を一方的に悪者にすれば収まるという問題ではない。この南シナ海問題は、結局は海に眠る海底資源を巡る争いである。この資源を巡る争いをたきつけてアメリカが暗躍している、という側面でものを見なければ本筋は見えてこない。確かに中国の埋め立ては乱暴であるが、最終的には話し合いで解決して、この海域を地域安全保障機構の管轄する共有地にし、資源開発を関係国が出資しあってその果実を共有する他ないのである。ヨーロッパ共同体の元をたどれば、欧州石炭鉄鋼共同体として、アルザス・ロレーヌ地方の資源を仏独でどう共同管理するかということから始まり、欧州原子力共同体に発展し、欧州経済共同体(EEC)となって、最後は欧州連合(EU)に至っている。アメリカはその南シナ海の資源の共同管理を各国に働きかける面で協力するのが正しい。
中国はこれからも埋め立てを続け、この岩礁を基地にするというアメリカ側の見方はおそらく正しい。この中国の埋め立てによって出来た基地周辺で軍事衝突が起こされるシナリオがもう出来上がっているのだろう。この場所が、アメリカ何するものぞ、という意識がある中国のナショナリストたち(例えば、中国の産経新聞と言われる「環球時報」の読者たち)にとっても、またちょうどいい国威発揚の場となってしまう可能性がある。しかし、仮に軍事衝突になったとしても、日本はあくまで中立を保つべきである。
(つづく)
<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。関連キーワード
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