2024年12月27日( 金 )

中島淳一「古典に学ぶ・乱世を生き抜く智恵」(10)

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劇団エーテル主宰・画家 中島淳一氏

 己の創作領域のみを棲家とし、その域を超えた活動には慎重になりがちな芸術家が多いなか、福岡市在住の国際的アーティスト、中島淳一氏は異色の存在である。国際的な画家として高い評価を得るだけでなく、ひとり芝居に代表される演劇、執筆活動、教育機関での講演活動などでも幅広く活躍している。
 弊社発行の経営情報誌IBでは、芸術家でありながら経営者としての手腕を発揮する中島氏のエッセイを永年「マックス経営塾」のなかで掲載してきた。膨大な読書量と深い思索によって生み出される感性豊かな言葉の数々をここに紹介していく。


スペンダーの詩に学ぶ~心に炎の中心を持って生きる~

中島 淳一 氏<

中島 淳一 氏

 スティーヴン・スペンダー(1909~95)は幼い頃から詩人としての意識に目覚め、外界と自我の断絶に苦悩した。
 1930年代初期に怒れる詩人として、英国詩壇に登場し注目を浴びる。スペンダーは彼自身の言葉通り「過去の不滅性となるべき未来」という理念に恋する詩人であった。
 「私は真に偉大であった人達を想いつづける」はロマンティックな純粋詩であり、深い感銘を与える逸品である。

 彼らの麗しい野望は唇が常に炎を浮かべながら全身を歌でまとった精神について語ることだった

 偉大な人間は時間が無限であることを知っている。たしかに地上の時間は流れはするが、時の囚人になってはならないのだ。宇宙の時間は空間であり、生命もまた永遠である。
 この世に生まれてくる時、歌う太陽である光の廊下を通りながら、人類の魂の歴史を反芻する胎児の記憶。その進化の最先端に存在する自分自身を自覚し、未熟な肉体の奥で春の木々の蕾のように麗しい野望を蓄える。やがて、成熟した肉体に咲き乱れ散りかかる欲望の花弁の美しさ。

不老の泉から汲まれた血の本質的な悦びを決して忘れぬこと

 高貴なることは自分自身の魂の欲望である。地上で後天的に形成された欲望ではなく、過去現在未来を貫く永遠なる自我の欲望である。この世に生まれてくるときに自覚していたあの純粋な欲望である。純粋な言葉、思考を生み、行動に駆り立てる強固な意志。
 人生を感傷的に眺めて過ごすのではなく、限られた地上の旅路を一瞬たりとも無駄に過ごさぬ覚悟。道無き道を自ら開く自由。無数の門をくぐり、無数の扉を開き、混沌とした闇の中を突き進む勇気。
 孤独と絶望の中でこそ、朝の素朴で透明な光の中の喜びを、荘厳な夕べの中に湧き出す愛の要求を決して否定してはならない。
 地上の不純な騒音と常識という名の濃霧で高貴なる精神の開花を窒息させてはならないのだ。

心に炎の中心を

 地上で一番高い山は太陽に最も近いが、最も寒い。高貴なる魂の名前は祝福され呪われている。生涯にわたり真の生命を求めて闘い、心に炎の中心を持って駆け抜けた偉大なる人々。彼らは知っていたのだ。人間は太陽から生まれ、太陽に向かって旅をする存在であることを。そして、その偉大なる名誉は風の中に刻印されるということを。
 人生は無論自分自身のためにある。しかし、人間が地上で到達し得る最高の境地は人類愛である。人類史に貢献する生き方。地上の諸現象を美しい形態へ創造する美的衝動。自分の意志を人類の意志に融合し燃え上がる炎。心にその炎の中心を持って生きる。それが真に生きるということなのだ。


<お問い合せ>
劇団エーテル
TEL:092-883-8249
FAX:092⁻882⁻3943
URL:http://junichi-n.jp/

<プロフィール>
nakasima中島 淳一(なかしま・じゅんいち)
 1952年、佐賀県唐津市出身。75~76年、米国ベイラー大学留学中に、英詩を書き、絵を描き始める。ホアン・ミロ国際コンクール、ル・サロン展などに入選。日仏現代美術展クリティック賞(82年)。ビブリオティック・デ・ザール賞(83年)。スペイン美術賞展優秀賞(83年)。パリ・マレ芸術文化褒賞(97年)。カンヌ国際栄誉グランプリ銀賞(2010年)。国際芸術大賞(イタリア・ベネチア)展国際金賞(10、11年)、国際特別賞(12年)など受賞多数。
 詩集「愁夢」、「ガラスの海」、英詩集「ALPHA and OMEGA」、小説「木曜日の静かな接吻」「卑弥呼」、エッセイ集「夢は本当の自分に出会う日の未来の記憶である」がある。
 86年より脚本・演出・主演の一人演劇を上演。企業をはじめ中・高校、大学での各種講演でも活躍している。福岡市在住。

 
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