2024年11月22日( 金 )

自主回収から4年、『茶のしずく』問題を振り返る(4)

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終わらない自主回収

 (株)悠香は2010年12月、悠香・(株)STGホールディングス・(株)Xena・(株)LinkRing・(株)Aerus・(株)悠美科学研究所の6社に分社化した【表参照】。同時期に(株)Jour en Jourを設立。12年2月にはインターネットサービスを展開する(株)LAGORITHを立ち上げた。8社の代表取締役はすべて中山慶一郎氏。グループ会社は合併を繰り返し、現在残っているのは悠香・Xena・悠美科学研究所の3社となっている。

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 『茶のしずく』石けんの自主回収の状況はどうなっているのだろうか。『茶のしずく』石けんは、自主回収で医薬部外品では初となる「クラスⅠ」に分類された。クラスⅠは「重篤な健康被害または死亡の原因となりうる状況」を指す。クラスⅠに分類された医薬品で13年・14年に発表されたものは、すべて自主回収が終了している。

 12年以前の自主回収の状況は公表されていない。福岡県の薬務課に旧『茶のしずく』石けんの回収状況について確認すると、「自主回収はまだ継続中。毎月、一定の数の商品を回収しており、自主回収を終了する理由がない」と回答した。現在でも自主回収が続いているということは、大量にまとめ買いした購入者などが、使用を継続していることを示唆していると言えそうだ。

法に基づく報告義務 厚労省「違反はなし」

 医薬品医療機器法(旧薬事法)では、製品に有害作用の可能性を示す研究報告を知ったときは30日以内に厚労省に報告する義務があると規定している。厚労省は12年1月から悠香に違反があったかどうかの調査を進めていた。厚労省の担当官はこの調査について、13年2月の時点で「文書でのやり取りを継続中だが、見解が一致せず、結論が出せていない」と話していた。その後も結論が出ないままだったが、改めてこの点を確認すると「法令義務違反に当たらない」との結論に至ったという。

 悠香側に違反がなかったという結論だが、国立病院機構相模原病院の福冨友馬氏が09年10月と10年10月に開催された「日本アレルギー学会春季学術大会」で、「加水分解小麦に対する経皮経粘膜感作が発症原因として疑われた小麦アナフィラキシー」に関する研究論文を発表している。福冨氏は10年11月にも、『茶のしずく』によるアレルギーと通常の小麦アレルギーを比較した研究論文を米国アレルギー臨床免疫学誌にも発表している。

 悠香側から厚労省が報告を受ける1年以上も前に、『茶のしずく』患者の研究結果が学会で発表されていたのだが、企業側が「知らなかった」と主張すれば、行政側も証拠を取りにくい。厚労省は本誌の取材(13年2月)で「企業がどの時点で、どこまで情報を知っていたかによって判断が異なる」と話しており、悠香側の主張を厚労省が認めた結果になったと言えそうだ。

 ただ、『茶のしずく』問題などを契機に厚労省は14年3月、医薬部外品と化粧品の副作用報告制度を改訂した。医薬部外品と化粧品の報告義務はこれまで「研究報告を知ったとき」に限られていたが、改訂後には15日以内の個別の報告義務が課されることになった。重篤な副作用は、「死亡・障害・死亡につながる恐れのある症例・治療に要する期間が30日以上の症状」など8項目にわたる。現在は、医薬部外品や化粧品でアナフィラキシーショックなどの重篤な副作用が確認された場合、15日以内に厚労省に報告しないと違反になる。

(つづく)
【山本 剛資】

 
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