弁護士に我が命(わが社)を預けられない
◆ 500万、いや1,000万が必要よ!!
このコーナーで一度、書いたことがある。30年越しの付き合いの友人が経営する別荘分譲会社が自己破産を申請した。
「自己破産を出す必要がなかったのではないか」
と友人に詰問をした。
「指摘されるとおりだ。弁護士に安易に相談をしたら自己破産を勧められた。軽率だったと反省をしている。個人の破産だけは取り下げるつもりだ」
と答えてくれた。
後の祭りだが、
「弁護士に相談をする前にまず財務プロに状況分析を行うべきだった」
と後悔をしている。
A社の親父は根っからの職人である。その腕は業界でも卓越した評価を得ている。
『匠の腕』に酔いしれていた面もあったのか、『生意気な奴』と反発を受けて主力受注先から取引を切られた。ここで一挙に受注が1億円も急減した。こうなれば資金繰りが非常事態になるのは自明の理である。
この事態に付け込んで元銀行OBコンサルが指導するようになった。指導してくれたのは1億円の粉飾決算だ。要は騙して銀行から資金調達する策略を図ったのである。しかし、いずれ資金の行き詰まりになる羽目となった。
そこで覚悟を決めて弁護士事務所に相談に行った。弁護士の返事は単純明快。
「自己破産なら500万、民事再生法なら1,000万円要ります」
と事務的な回答にA社社長は腹のなかが煮えたぎるような怒りが込み上げてきた。
「皆に踏み倒し迷惑をかけることで罪悪感を抱いているのに加えて追い銭を打つわけにはいかない。となれば一般取引先だけには支障をきたさない道を探そう」
と暗中模索で必死の解決策を求めた。
◆ 助言者に恵まれて自力路線へ踏み出す
A社社長の現状を心配してくれた友人が極力、自力再生を指導するアドヴァイサーを紹介してくれた。この先生はA会社の財務状況をただの5分眺めて
「厳しいけれど一般債権者には迷惑をかけない自力再生はできる。但し銀行の返済は長期に切り替えなければならない」
と結論を下した。
「まず発行手形をゼロにする。そうすれば潰れることはない。資産という資産は売り払い経費削減を徹底する。再建計画案を作成して銀行に説明に行く。次には利益のでる仕事の確保に奔走をする」
と冷酷な改善策を突きつけた。
A社社長は2週間かけて再建案を練り上げた。「死ぬ思いで」の策定案を持って銀行に行った。鬼神の形相で説明したことが功を奏したのか銀行の担当者は了解をした。
「いやー、生きた心地がしなかった。20年、30年付き合ってきた業者を踏み倒すことを考えるだけでも眠れない夜が続いた。これで安心して熟睡できるからほっとした。まだまだ厳しい局面が予想されるが、仕事に専念できるから気分は楽だ。時間をかけて銀行さんには返済するから勘弁してもらおう。しかし、経営者たるもピンチに立っても己の命を他人に託す選択をしたらいけない。ガムシャラに再生の道を奔走すれば周囲の方々から愛の手を頂くことができることを知ったことで貴重な経験をさせていただいた」
と謙虚に語る。
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