サラリーマン社長と創業社長の執念の差 [4]
◆ 孫氏と山田氏は気が合う?
ところでここに来て面白い情報が飛び込んできた。日本一でないベスト電器には魅力がないがヤマダ電機には魅了される。あの業界制圧を願い手にしたヤマダ電機のオーナーと孫氏とが手を結んだという説だ。ヤマダ電機のベスト電器の株買い占めは陽動作戦であるという注目すべき情報である。
ヤマダ電機の山田昇社長とソフトバンクの孫オーナーの共通点は恐らく市場を日本という狭い枠を超えて『世界に羽ばたく=世界一』の野望を持っていることであろう。業界が違うから二人が20分話をすれば意気投合することは間違いない。「日本の家電の革命をやろう!!」、いや「世界の革命をやろう!!」と握手をした。
山田オーナーからは「孫さん!!貴方の通信革命の実現には協力をします」と話が発展していったのではないか!!
◆ 宮崎出身では異色
山田昇氏は宮崎県佐土原町出身(現在、宮崎市)だ。筆者もJR日豊本線の佐土原駅から北へ二つ隣の駅の出身である。
宮崎県人はただ人が良い『芋がら朴と』で粘りも執念もない取り柄のない県民性であることは世間一般承知のことだ。
ところが、この山田氏の企業野望・執念の異常さはどこから育ってきたのか理解不能だ。駅二つしか離れていない日向人として山田氏はまさしく異邦人である。
弊社のIBやネットIBでも取り上げたが、山田氏の事業原点は
「事業を起こした時に下請けとして発注先からいびられたことだ」
と指摘されている。
理不尽さを回避させるために一般ユーザーダイレクトビジネス(家電販売)に転じた。家電販売では後発である。10年前までは北関東を拠点にしたローカル業者だったのだ。それが『日本一』の旗を掲げて一躍を浴びだしたのは僅かこの10年である。全国津々浦々の場所に郊外店を展開してきた。結果、公約どおりに全国の頂点に登り詰めた。
さらなる欲望は尽きない。ベスト電器に食指を始めたのだ。
◆ 狙いは都市中心部の基幹店
ヤマダ電機にしてみればベスト電器の株の買い占めは余裕・お遊びだ。だがベスト電器にしてみれば死活問題である。有薗社長をはじめ経営幹部たちは眠れない日々を送っている。ヤマダ電機にしてみれば前述したとおりに「ベスト電器の株買い占めは陽動作戦である」のだ。「ベスト攻略は時間の問題だ」と踏んでいる。舐めかかっている。
それよりもこの福岡で話題になっているのは「岩田屋跡地をヤマダが買うのか買わないのか」だ。それだけヤマダ電機は都市中心部の基幹店造りに関心を示している証明なのである。
この全国主要都市での中心部での基幹店設置完了で年商2兆円を突破させて新たな野望は世界へ関心が向く。となれば店舗の展開よりも中心部の巨艦店を持つライバルを傘下に置くことの方が手っとり早い。相手はヨドバシカメラでありビックカメラである。
「まずヤマダはターゲットをビックカメラに絞った」
というのが東京情報なのだ。
「ベスト電器の株の買い占めに関心を寄せて本筋の狙いを隠すという戦法なのだ」
という関係者の見通しである。しかし、この闘いはサラリーマン社長対創業者との戦いでなくお互いオーナー対オーナーのガッチンコの衝突の戦争でないからであるから簡単には勝負はつかないだろう。
この山田社長の剛腕ぶりに利用価値を見出したソフトバンクの孫オーナーがヤマダ電機と共同でどういうビジネスを構想しているのかは別の機会にレポートしよう。
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