サラリーマン社長と創業社長の執念の差 [9]
社長の責任の重さを知る(中・2)
◆ 敢え無く自己批判
経過の報告をスピードアップする。
平成18年6月頃、城戸オーナーは諸般の事情で経営のチェックできない環境にいた。オーナーが口出しできない状態の中でサラリーマン社長の樺島氏は常識的な判断する。
「染川氏が言いがかりをつけるはずがない。返すべきものは返すことが賢明な決定である」
と自己に言い聞かせて染川氏に同氏の持分である宝州興産の100万円分の金額を振り込み返済した。これで一件落着に終わってはずなのだが。
城戸オーナーが冷静に処置できる環境が整備できた。大量の支払いの伝票をチェックする中で想像するに青筋を立てたはずだ。
「何だ!!この染川への100万の払いはどうしたのだ!!」
と激怒した光景が目に浮かぶ。
社長樺島氏が呼びつけられたのか、危機管理室の田中氏がどやされたのかは定かではない。平成16年4月の領収書を提示した。
「これを見てみろ!!染川の持ち株分は平成16年4月に買い取っているではないか!!染川のこんな詐欺師紛いの仕掛けに乗せられて」
と怒りまくった城戸オーナーに心中には同情できる。
やはり恙無く事を収めようとするサラリーマン社長・樺島氏の動揺振りが目に浮かぶ。危機管理の状態をサラリーマン社長ではとてもではないが打破できないことを樺島氏の甘ちゃん経営姿勢が立証をした。
城戸オーナーから叱責を受け虚仮にされた危機管理室の田中氏(資料2を参照して同氏の気持ちを察しされたし)は怒りを込上げつつ染川氏に警告書を送りつけた。
「まさしく我が社を愚弄した行為だ。詐欺行為にも等しい。これなら刑事件としても対応しなければならない。早く100万円を返済されたし」
という文面内容であった。高飛車で資料2を送りつけられた田中氏にしてみれば気分爽快になったであろう。
前回、「奇々怪々の失念」と指摘した。総務・経理畑を歩いていた染川氏が100万の株券代を返済してもらっていったことを失念していたことが不思議でならない。同氏を知る人誰もが
「返済して貰った事実を知って悪巧みをする人物ではない」
と弁護はする。しかし、仕掛けられた側・オーナー城戸氏にしてみれば誰をも信じられない心理状態の時期だった。
「染川が二重取りの画策をしやがった」
と憎しみの念がむらむらと燃え上がった。
染川氏のとる道は一つしかない。平身低頭して謝るしか残されていないのだ。まずお金を返済した。そして城戸氏への詫び状を平成18年9月に届けた。触りを紹介しよう。
「この度、私の思い込みと勘違いで、城戸社長及び作州商事株式会社様には多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。お怒りはごもっともと存じます。お詫びの申しようもございません」(以下省略)
まさしく全面降伏の内容である。昔の言葉で言うと自己批判を述べて許しを請おうとしたのであった。染川氏はこれで事が済んだと考えていたのであろうか。普通ならば「城戸オーナーの腹の虫は納まらないはずだ」と判断するはずだが──。
ここ一番の勝負に弱い人は会社経営者にならないほうが賢明だ。この自己批判書があとで尾を引くのである。まだまだドラマは続く。
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