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【人生のエナジー】福岡地場マンションデベの系譜 その黎明期から現在をたどる (8)
特別取材
2007年10月31日 14:48
アークエステート(株) 山本 博久 氏

アークエステート(株) 山本 博久 氏
山本 博久 [やまもと・ひろひさ]
┃1937年1月16日 大阪生れ
┃住友生命勤務を経た後、37才にして不動産仲介会社を起業。
┃東峰住宅(株)社長、アーサーホーム(株)社長などを歴任し、
┃現在はアークエステート(株)代表。


■ マンション黎明期、そこに見える意識とは

 独特のシステム開発に成功した山本。それはマンションの無人管理システム、T・R・Sシステムだった。

 現在であれば当たり前に行なわれている通信回線を活用した集中管理システムも、当時では画期的なことだった。これによりマンションにおける様々な設備・管理機器の一括管理ができるため、それらの設備メーカーも喜ぶであろう、と思っていた山本。

 ところがエレベーター会社は当初そのシステムにそっぽを向いたのだ。
「そんなことをされると、うちの立場がなくなってしまうじゃないですか」
 保身に走り、自社権益、立場に固執するのは、今も昔も変わらない。

「それではエレベーターが故障した時はどうやって分かるんですか。エレベーターと会社を結ぶ通信システムなんかないじゃないですか。マンションやビルの機械室で分かるだけで、ビルにいる誰かが気付いて会社に連絡しない限り分からないんでしょう。でもうちのシステムなら、警報が鳴ったらすぐお宅に知らせ、そうすればお宅はいち早く係員を派遣でき、素早く対応できるんですよ」

 こう言ってエレベーター会社各社を説得した山本は、ようやくエレベーター会社の納得を導き出した。それによりT・R・Sシステムは設計段階より組み込まれるようになり、やがては標準仕様となった。
 これが東進ビルサービスをマンション管理会社として、確固たる地位を固める大きな礎となったのだ。

 その後警備会社も管理業務に参入し始める。警備会社による管理となるとセキュリティ上の安心感が醸し出され、マンション居住者もそちらに傾きがちになった。

 しかし山本は、マンションの管理というものは、居住者を第一に考えなければならず、だからこそ即時即応体制が必要で、その体制を取れるのは、自分の会社のような管理に特化した会社であって、警備会社にはその体制は整えられないことを強調。
 警備会社は、設備事故が起きても取り敢えず警備員を派遣して応急処置をするだけで、専門的解決、処置は翌日にしか対応できない。自分の会社であれば、全くそのようなことはなく、即時対応で専門的対処ができる、と居住者に説明。居住者もそれを聞いて納得していった。

 とは言え、当時は居住者自身、団地住まいの経験はあっても、自己保有、複数人で財産を共有すると言うマンション住まいの経験は無いに等しく、自主管理と言う概念は、その存在すら認知していなかった。それ故に共有財産を管理する自主管理組合を作り、自らの住いを守り、管理すると言う考え方、方法論にも欠けていた。

 そこで山本はマンションにおける様々な事故事例を挙げ、それに対処するには管理組合で対応しなければならないことを説いた。併せて法律によって皆さんの共有財産を守らなければならにこと、一部のオーナーが勝手に改造をし、共有部分を占有もしくは改造するようなことを防がなければならないこと、それができるのは組合しかないことを丹念に説明した。

 そしてマンションは購入した居住者の財産であり、仮住まいのものではないから、大切にして欲しい、と語り掛けた。

 それでも山本のこの説明、説得が居住者に浸透するには時間を要した。それでもどうにか居住者の意識には少しずつ変化が現れ始める。

 今であれば当然の概念も、マンションデベロッパー黎明期、そしてマンション居住者にとってのマンションライフ初期とはそんな時代だったのだ。


(つづく)


※この連載は小説仕立てとなっていますが、あくまで山本氏への取材に基づくノンフィクションです。しかし文章の性格上、フィクションの部分も含まれる事を予めご了承下さい。


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