寝耳に水
大手元請と地場企業との関係のあり方についてスタンスは以下の通りである。大分県の仕事を例に挙げて見ることにしよう。
積水ハウス(株)が桜台団地を手がけていた時である。なかなか販売がうまくいかない。そこで大阪設計部からきて設計をし直したが価格が高くなってどうしても売れそうにもない。
そうするうちに「岡本を呼べ」ということになり、岡本氏は大分に飛ぶことになる。
岡本氏は
「ここの工事は地元の業者も楽しみにしているだろうから、地元の業者を使ったらどうでしょうか」
と言ったそうである。しかし「地元の業者では設計通りに行うのは技術的に無理だ」ということで岡本氏が引き受けることになったそうである。
この例にも見られるように岡本氏の考えは、大手と地場との関係は「互恵」の関係でなければならないということである(多くの企業も口にする言葉ではあるが)。
各県にはそれぞれ大手との協力会社が存在する。そこでの協力関係の中で地元の業者も潤い、発展していく。また大手にも利益を及ぼしていく。もちろん、協力関係の中身の善し悪しがが問題であることは言うまでもないことである。
岡本氏は、無理をしてでも他県の仕事を「奪う」ようなことはしたくないということである。利益を追求することは企業としては第一の目的である。かといって大手と地場との関係のあり方まで壊して過度の利潤を得ることは筋ではない、ということであろう。
ある意味では経営に「ウブ」であり、ロマンチック過ぎるという批判は免れないかも知れない。
こうした関係のなかで(株)岡本採石造園の売上げにおける積水ハウス(株)の占める割合は9割ほどに達するほどになっていったという。95年以降は売上げの減少が続き、3年前には最盛期の半分以下まで落ち込んでいった、という。
こうした中で売上げの9割ほどを占める積水ハウス(株)は、(株)岡本採石造園の文字通りの生命線であったということはいうまでもないことである。
福岡市が中心となって総力をあげて取り組んでいる博多湾に浮かぶ人工島──アイランドシティ事業。04年11月、その住宅地に積水ハウス(株)は戸建て住宅に着工することになった。
岡本氏はアイランドシティ「照葉のまち」の住宅地の仕事を受注しようといつものように積水ハウス(株)の担当に営業活動に出掛けた。これまでの関係からしても受注できると思っていた岡本氏への返事は
「もう仕事は出さないよ」
というものであった。
絶句した岡本氏の頭の中は真っ白になった。
(つづく)
株式会社 岡本採石造園 |
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