ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

特別取材

【人生のエナジー】福岡地場マンションデベの系譜 その黎明期から現在をたどる (16)
特別取材
2007年11月12日 16:15
アークエステート(株) 山本 博久 氏


アークエステート(株) 山本 博久 氏
山本 博久 [やまもと・ひろひさ]
┃1937年1月16日 大阪生れ
┃住友生命勤務を経た後、37才にして不動産仲介会社を起業。
┃東峰住宅(株)社長、アーサーホーム(株)社長などを歴任し、
┃現在はアークエステート(株)代表。


■ 第一期マンションデベロッパーの衰退

 マンションデベロッパー黎明期には様々なデベロッパー企業が興され、興隆期を彩ってきた。

 山本が興したアーサーホームも紹介した顛末を迎えた。そしてその草々者と言える東峰住宅産業の財津氏も亡くなり、会社自体も今は無い。あれほど興隆を誇ったマンションデベロッパー群も今はほとんど無くなり、目立つは新栄住宅を残すばかりとなった。

 それは業界の宿命とも言える。過去においては現在のような様々な資金調達手段はなく、開発資金は全て自らの手で仕込まざるを得ないが故、必然的に借入金、即ち借金が増えていくことになる。それが、ある時の景気変動で途端に首を締め出し、苦しくなる。それこそ自然の理(ことわり)と言うものであろう。

 その点において言えば、メインバンクの能力の差がマンションデベロッパーの命運を決する、と言っても過言ではない。新栄住宅が生き残ってきたのも、創業者であり現代表である木庭氏の才覚と慎重さもあるが、何と言ってもメインバンクである福岡銀行に依るところも大きい。

 危険信号が灯りそうになると、いち早く損切りをさせてでも、その危機を回避させるアドバイス、指導を行ない、且つ下支えしていく。

 しかし、山本のアーサーホームの場合は、山本自身が今のタイミングであれば1億円程度の損失で済むと判断、損切りに入ろうとしても、メインバンクのS銀行はそれを拒絶。結局タイミングを失し、10億円物件を1億円の損で売れていたものが、1億円でしか売れなくなってしまう事態を招く。

 こと程左様に銀行のミスリードが企業の存立を危うくし、そのことによって多くのマンションデベロッパーが債務超過となり、デス・スパイラルに足を踏み入れ、結局蹉跌の道を歩むことになった。

 企業経営者は、メインバンクの指導にNO!と言うことはできない。それ故に、それがミスリードであれば、企業は一歩間違うと破綻へと突き進んでしまう。

 この一連の流れが、あれ程の隆盛を誇った第一期マンションデベロッパー興隆期を終焉へと導いた一因として確かに存在する。

 企業経営者は血の汗を流し、自社の吉凶に鋭敏な神経をすり減らしながら業を推し進めていく。しかし禍福はあざなえる縄の如く足元に忍び寄ってくる。その影を連れてくるのが銀行であれば、如何なる手段、能力を振り絞っても完全に防御することは不可能だ。

 それ程銀行の定見、先見性、能力は問われており、それ故国指導の金融再編が行なわれたのだ。
 銀行はその能力の低さ故に不良債権が厖大に膨れ上がり、国庫資金の投入を受けながらも吸収、合併によりその姿を消していったのだ。

 企業にとっての栄枯盛衰は如何なる企業にも訪れる。それがマンションデベロッパーであれ、それを支える銀行であっても、同じ跌を踏むことに変わりはない。

 それが第一期マンションデベロッパーに訪れたことも、経済原則の帰着点であり、まさに自然の理だったのだ。


(つづく)


※この連載は小説仕立てとなっていますが、あくまで山本氏への取材に基づくノンフィクションです。しかし文章の性格上、フィクションの部分も含まれる事を予めご了承下さい。


※記事へのご意見はこちら

特別取材一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル