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ベスト電器は生き残れるか 中間決算から見る過去の雄 (1)
特別取材
2007年11月20日 15:30

ベストとヤマダの確執


 連結中間決算は、東京の「さくらや」を子会社化したことにより、23.3%の大幅売上増となったものの、利益面ではさくらやの改善が遅れていることもあり、減益となった。

 11月1日、ヤマダ電機社長は40%まで買い増すと再度買増宣言をしている。


Company Information
社  名:(株)ベスト電器
代  表:有薗 憲一
所在地:福岡市博多区千代6-2-23
設  立:1953年9月
資本金:289億7,600万円
売上高:(07/6連結)3,689億7,900万円
店  舗:(07/8)直営276店(含海外36店)、FC296店、計572店
従業員:(07/8)連結6,048名、単体3,747名


■ 熾烈を極める業界

 ベスト電器には、新時代を担う経営陣が存在しない。創業オーナーであった故・北田会長のカリスマ性を失ったのにもかからず、第2・第3社長もカリスマ性を持っていると錯覚していたきらいがある。しかし、経営数値はいかんともしがたく、第3代(現、有薗社長)はビックカメラに救いの手を求めたのである。

 ヤマダ電機からの乗っ取りに怯えた結果だろうが、独自の経営では現状の行き詰まりからも脱却できず、事業提携はむしろ必然であったと思われる。
 時代とともに経営陣も変化が必要だ。しかし福岡という田舎ゆえ、外部の叡智を経営に活かそうとはせず、自力経営の限界を露呈させたのであった。

 とはいえ、ベスト電器の自己資本は853億6,400万円(連結、率38.4%)。普通の会社なら優良企業だが、それでも今後の市場で生き残れるか問われるという家電量販業界の厳しさが、そこには存在する。

 では、どこに問題があるのか検証してみよう。


■ ベストの弱点4つ (1)

1.マーケティング力・情報力の欠如

 コジマとヤマダ電機が福岡に押し寄せてきたとき、有薗社長(当時専務)はマスコミに対して「包囲網の店舗をつくり駆逐する」と述べている。
 1店舗だけだったらこれも可能であろうが、2社とも矢継ぎ早な出店を行ない、店舗網を確立した。コジマもヤマダも、すでに有薗氏が知り得ていた会社ではなかったのである。そこにも情報力の欠如が大きな影を落とした。

 対抗してつくった店舗は鳴かず飛ばずの状態であり、閉鎖した店舗もある。また逆攻勢をかけた新宿高島屋への進出も同様。日本一を誇ったベスト電器は、敵がどこなのか絞り込めなかったのだろう。

 ベスト電器の重要店舗として新設された香椎店も、情報不足から泣かず飛ばず状態である。同店隣のダイエー跡地へヤマダが入居。しかし、ベスト電器が香椎店の建設に入る時には、すでにダイエー香椎店の閉鎖は決定していた。その後のチェックを怠ったばかりに、ヤマダが入居してしまうのである。
 ベスト電器は福岡から出た日本一企業にもかかわらず、地元財界活動とは無縁だ。そのため、ダイエー香椎店ビルを所有する福岡地所に釘を刺すこともできなかったのであろう。

 ちなみに香椎店は、ある程度の売上は計上されているが、ヤマダとの対抗から安売り合戦を繰り広げており、利益率に問題が残る。

2.ヤマダに利用される商品戦略

 ヤマダ電機の種別商品数は以外と少ない。同じような商品をスペースに並べ、豊富なアイテム数に見せている。一方ベスト電器は、電気製品を網羅しており、何でもありの商品構成だ。売筋商品ばかりに注力するヤマダに対し、売れなくとも必要な物は置くというベスト電器である。

 顧客から見ればベスト電器の方がさまざまな商品があり助かるが、肝心の購買となると、テレビ、白物家電、パソコンなどの販売価格重視になる。価格勝負ではSEM方式で商品仕入を行なうヤマダに利があり、この仕入方式はヤマダの成長路線を維持するための原動力となっている。商売はユーザーにも喜ばれ、株主にも利益を上げ喜ばれなければならない。しかし、空前の利益を上げ続けるヤマダに対し、ベスト電器の利益はジリ貧状態となっている。

 しかも雑貨に近い電器製品は、ロジャース(ルミエール)・トライアルなどの量販店やホームセンターに行けば、ベストより安く調達できる。商品種類の豊富さはベスト電器の良さでもあるが、利益面は厳しい。商品回転率から見ても、ヤマダはベストの倍近い数値となっている。

 過去、当誌面を通してベスト電器幹部に、利益率がまったく異なるDCM方式(製品企画を行ない全量買取方式)による仕入をすべきであると進言してきたが、大量に購入すれば仕入コストに差は生じないと聞き入れない。

 このようにベスト電器は、商品構成のうえでヤマダ電機の補完的な役割を果たしているとも取れるのである。

さくらや、ベスト電器、ヤマダ電機、決算数値比較 (単位:百万円)
 
さくらや
ベスト
ヤマダ
 
06/2期
07/2連結
07/2単体
07/8中間連結
07/8中間単体
07/9中間連結
売上高
56,983
368,979
341,186
209,062
180,036
676,952
営業利益
872
2,081
1,493
415
509
21,570
経常利益
118
2,340
2,793
451
1,104
29,106
当期利益
▲218
1,497
2,077
237
712
17,600
総資産
26,862
196,521
196,521
222,522
194,993
482,861
純資産
4,691
87,949
87,949
85,364
86,784
269,885
※さくらやの子会社化は06年12月


(つづく)


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