ベストとヤマダの確執
◆ ベストの弱点4つ (2)
3.直販とフランチャイズ戦略
ヤマダ電機は直販体制でオーナーの意思により動いている。しかし、ベスト電器は過去FC戦略を採っていたため、ベスト電器の意向がそのまま反映されるわけではなかった。不採算FC店の買収なども行なってきたが、強力な営業方針でFC店を統率できなければ、ヤマダには対抗できない。
鹿児島地区は完全にベスト電器のエリアFCが経営している。独自戦略で経営しており、場所取りも上手い。しかし今後、ケーズデンキFCから寝返ってヤマダに付いた正一電気が、テックランド展開を急激に進める可能性が高い。ヤマダ電機社長は宮崎県出身であり、力も入る。
4.M&Aの戦略
業界売上高ランキングを7位まで落としたベスト電器は、売上高だけでも他社に置いていかれまいと、昨年12月、東京を中心に17店舗展開している家電販売のさくらやに対して資本参加、子会社化した。ところが、今中間決算では本体の足を引っ張っていることが判明。25億円の大金を叩いて購入した相手先は、売上高もさることながら利益を出すことが条件となるが、100%株主であったフェニックス・キャピルタルの戦略に…。
ヤマダ電機は全国を制覇し、今後は対象人口を小区分化したエリアに進出するだろうが、現在は都心に攻勢を仕掛け、池袋を皮切りに品川大井町、新橋、秋葉原への大型の「LABI」店進出強化を図っている。都心型のビックカメラとヨドバシカメラの成功に対して、手薄であった都心への強化をM&A(キムラヤ・サトームセンなど)や直接投資により図っている。
郊外型のヤマダが都心で成功するだろうかという疑問も一部にはあるが、パワー営業ができ、超ワンマン社長率いる現在のヤマダ電機に陰りは見えない。
◆ 廻り行く業界
山田昇社長は11月1日、ベスト電器の現在の持株比率7.71%を、今後40%まで買い増すことを発表。
「製品メーカーが共同仕入を認める40%を目指す」
ためであり、
「共同仕入によりベスト電器側にも多大な利益が生ずる」
としている。
企業価値を高める利益の拡大は仕入コスト削減が必須であり、それを可能とするヤマダ電機側の買増目的(最終意図は故郷九州制覇か?)に対して、株主を抑えることは困難、最終的には対応できないと専門家は述べている。それを拒絶するには、ビックカメラなどと早期に経営統合してホールディングスに移行するしか方法がないと思われるが、相手社がそこまでのリスクを被るか課題が残る。
ベスト電器は昔、業界の「安売王」として日本一まで登り詰めた。今はヤマダ電機の時代である。
しかし、次の時代にはヤマダの価格が当たり前になり、次の日本一が現れることになる。
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