明星食品のホワイトナイト
米投資ファンド、スティール・パートナーズが、日清食品株を買い占めていることが明らかになったのは、05(平成17)年の秋頃だ。ただスティールは、食品業界を中心に多数の株を買っており、日清は、その1社にすぎなかった。
スティールが投資資金の回収に取り掛かったのは、即席麺の明星食品だった。TOB(株式公開買い付け)を仕掛けて、ホワイトナイト(白馬の騎士)が現れるのを待つ戦術。保有株の高値売却で、キャピタルゲインを得るのが狙いである。
スティールの揺さぶりに恐れをなした明星食品が、ホワイトナイトを頼んだ先が日清食品だ。日清は06(平成18)年12月、明星株のTOBを実施し、発行済み株式の86.3%を取得し、連結子会社に組み入れた。明星株取得に319億円要した。
日清のTOBに応じ、多額の売却益を得たスティールは、その売却代金で、日清株を買い増していったのである。日清はスティールに支払ったカネで、自社の株を買い占めるられるという皮肉な結果を招いた。
スティールによる株買い占め
スティールの日清の持ち株比率は07年3月期時点では9.5%。さらに買い増しを続け、10月31日時点では18.99%に高めた。
日清は、議決権ベースで20%以上の株式保有を目指す敵対的買収者が現れた場合、新株予約権の発行で対抗する買収防衛策を導入している。スティールは、買収防衛策の発動水準となる20%近くまで、日清株を買い進めたわけだ。
スティールは、ホワイトナイトの登場を待って、日清株を高値で売り抜けて、明星食品に続く2匹目のどじょうを狙っているのは、いうまでもない。しかし、手をこまねいているわけにはいかないのも事実。
このようにスティールと日清経営陣との間に緊張感が高まる中で、飛び出したのが、日清がJTと手を組んでの加ト吉買収だった。
日清の意図は明白だ。日清はJTに、スティールによる買収を撃退するホワイトナイトを期待しているのだ。
日清は明星の買収に319億円、加ト吉の買収には564億円を投じる。資金負担が重くのしかかる。加ト吉の買収資金を調達する名目を掲げれば、JTとの資本提携の大義名分が立つ。JTが出資すれば、スティールの保有比率を引き下げることができる。JTとの資本提携は、日清にとって最大の買収防衛策になるのである。
日清が加ト吉買収に応じたのは、JTと手を組むことに本当の狙いがあったのではないか。日清がJTの傘下に入るかどうかに注目が集まる。
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