先日お伝えした、住民監査請求棄却の件についてだが、あまりにも不可思議な点が多い
ので、改めて、福岡市の監査委員の摩訶不思議さを補足してお伝えしたい。
◆その1 そもそも何を「監査」したのか?
そもそも今回、市民オンブズマン福岡(児嶋研二代表幹事)が出した住民監査請求は、平成18年度に福岡市議会の会派及び議員に交付された政務調査費のうち、とても政務に関わる調査として使われたとは思えない分の約2億8千万円を市に返還するように「市長に命じろ」という請求である。
どうしてそのように回りくどいことをしなければならないか。地方自治法第242条には、住民が監査を請求する対象としては「当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員」との規定があり、議員に対して住民から直接「返せ」とは言えないようになっているのである。
そこで、市民オンブズマン福岡としては、政務調査費としては不適切に使われた分を議員に返還するよう市長が命じるように請求するしかなかった。
本来、「請求の意図」「請求に至った経緯」を踏まえて監査をするのであれば、本当に18年度に使用された政務調査費が正しい使い方をされたかどうかをチェックするはず。ところが、市監査委員は「市長が政務調査費の使途基準に反する支出を認識できたか」を監査方針として調査したに留まった。
実際に調査したことといえば、市議会事務局職員への聞き取り、議員や会派の収支報告書をチェックしただけ。肝心要の「一件5万円以上の支出に義務付けられる領収書」については調査せず、結局「市長は議会が政務調査費の支出を自主的に精査していたと認識できる状況にあった」としたが、そもそも、市議会が自主的に精査しているとは思われないから、住民監査請求が起こっているのに、監査事務局としては「手続き上、法律上は何も問題ない」と言っているわけである。
ちなみに、児嶋代表幹事によると、26日には京都府議会に対して7,500万円の返還勧告、27日には川崎市議会に対して1億2千万円の返還勧告が出ているが、住民監査請求の文面は各地のオンブズマンで同様のものだったという。ということは、京都府や川崎市では、議員の調査費の使用について監査がなされたということに他ならない。なぜ、福岡ではそこに踏み込むことがなかったのだろうか。
今回の監査は市監査委員の「法の悪用」というべきである。「法」とはみんなの共同生活を円滑にならしめるようにあるはずではないか。その法の背景にある「社会的要請」までを無視していいはずがない。
市の監査委員の基本的態度は、とにかく、世間が何と言おうと法律の文面さえ守っていれば問題ない、あくまで法律に従って粛々と監査を致しました、というもの。こういうのを「法匪」と言うのだ。
福岡市だけなぜ返還勧告に至らなかったのか。それは残念ながら監査委員が「法匪」だったから、としか言いようがない。
つづく
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