(株)ジー・エデュケーションによる買収も決まり、講師、従業員の再雇用、そして受講者救済とようやく事後処理が動き始めた英会話教室のNOVA。今後、猿橋望氏への責任追及に焦点が絞られていくと思われるが、これほどまでの放漫経営が行なわれてきたのは、杜撰な会計処理がまかり通っていたからに他ならない。
前払い受講料が簿外債務に
豪華社長室など猿橋望社長の振る舞いばかりが非難される英会話教室大手NOVAだが、あまりマスコミから責任を指弾されない「悪」の張本人がいる。いい加減な会計処理を黙認して生きた大手監査法人「あずさ監査法人」のことである。
NOVAが10月26日に大阪地裁に提出した会社更生手続き開始申立書などによると、今年7月末時点の帳簿上の資産は423億円で負債は439億円。負債が資産を上回り、帳簿上の債務超過額は約16億円となっている。
しかし、会社継続を前提としない清算価値を適用すると、教材や設備などの資産価値は当然帳簿上に記された価値より大きく目減りする。さらに、これまで帳簿上に計上していなかった受講生への解約返戻金約700億円の「簿外債務」を加えると、負債額が一気に膨らみ、債務超過額は940億円にもなる。これに8月以降の講師への未払い給与や家賃を含むと、実質的な債務超過額は1,000億円規模になりそうだ。
問題なのは、前払いの受講料がなぜ「簿外債務」になるのか、という点である。
NOVAの有価証券報告書を仔細に読むと、そのからくりは実は簡単である。最近はEDNETで簡単に有価証券報告書が手に入るのでぜひ手にとって見てほしいが、「財務諸表作成のための基本となる重要な事項」として、NOVAは特異な「収益の計上基準」を持ちこんでいる。2007年3月期の有価証券報告書だと50ページにこう記載されている。
「売上高のうち、主な収入である駅前留学サービス収入は、主として『入学金』ならびに『受講料』(うち45%が『NOVAシステム登録料』であり、残りの55%が『NOVAシステム利用料』であります)から構成されていますが、そのうち『入学金』および『NOVAシステム登録料』については契約時に収益として計上し、『NOVAシステム利用料』については、契約期間に対応した期間にて均等計上しております」
前払いされる受講料のうち、45%を「NOVAシステム登録料」に、55%を「NOVAシステム利用料」とすることとし、前者の「NOVAシステム登録料」は契約時に売上高に計上する、と書かれているのだ。つまり、契約した段階で、まだ対価としての英会話授業のサービスをしていなくても、受け取ったお金の45%を自動的に売上高計上できていることとなる。だから受講生への解約返戻金が簿外債務になってしまうのだ。
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