「英雄志向型」の韓国政治
韓国の政治状況を見ながら、「坂本龍馬の不在」を連想したのは、僕だけでもないようだ。朝鮮日報の鮮于鉦(ソヌ・ジョン)東京特派員が、「もし韓国に坂本龍馬がいたなら」というコラム(11月13日)を書いていたからだ。少し引用する。
――坂本龍馬の最大の業績は、薩摩と長州による「薩長同盟」を仲介し、権力移譲である「大政奉還」に寄与したことだ。そうした意味で、竜馬は「戦争の英雄」ではなく、「仕掛け人」といった存在だ。(中略)。最近、「韓国にも坂本龍馬のような人物がいたなら…」と思わされることが多い。韓国には英雄を目指す人は多いが、日本における坂本龍馬のような役回りを買って出る人物がいない。(中略)。19世紀末以降、韓国と日本が対照的な道を辿った原因もこんなところにあったのではないかと思われて仕方がない――
同特派員は、右翼の巨頭・頭山満や軍参謀出身の瀬島龍三、さらに読売新聞の渡邉恒雄氏も、「広い意味では龍馬の伝統を受け継ぐ仕掛け人の一人」として見ている。外国人からの視点として面白い。
順調にプレ選挙戦を戦ってきた李明博陣営も、ここに来て不祥事が相次いでいる。自分が所有するビルを管理している会社に自分の長女らを「幽霊社員」として登録させ、計8,800万ウォン(約1,069万円)の給与を受け取っていたとされる疑惑が浮上したのである。インターネットで批判が高まると、李候補は11日になって、「申し訳ない」と謝罪した。
李候補の側近とされる李方鎬(イ・バンホ)ハンナラ党事務総長は最近、李会昌氏の出馬を阻止するためとして、違法資金の残金を記録した手帳が存在するといった唐突な発表を行い、周囲を当惑させた。陳大済(チン・デジェ)元情報通信部長官を経済再生特別委委員会の顧問に起用すると発表したものの、それから1時間もしないうちに発表を撤回する事態も起きている。
「李候補やその周辺はなぜこれほど問題ばかり引き起こしているのか。胸に手を当てて、今の事態を見つめ直すべきだろう」(朝鮮日報社説)。保守派新聞の心配のタネは、尽きないようである。
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