◆その2 誰の方を向いて「監査」しているのか?
前回お伝えしたのは、地方自治法242条によって、住民監査は、会派や議員に直接、政務調査費の返還を求めることができず、市長や市職員に対し、返還させるよう勧告して下さい、と言うことしかできない。それをたてにとって、福岡市監査委員は、政務調査費がどのように使われたかを精査することもなく、市長が行う政務調査費に関わる支出と収支報告は、適切な手続きで行われた、よって、市長に対して政務調査費の返還を議員に勧告するよう求めた住民監査請求は棄却する、ということだった。
仙台高裁の平成16年7月29日の判決では、「収支報告書の記載から見てその使途に疑問を抱くべき事由がないのにむやみに政務調査費の使途についてその調査を行うということは、調査権の濫用であって、議員活動の自主性を尊重するという観点からも許されるべきではないが、他面、政務調査費の使途に合理的な疑問がある場合にその使途を調査するということは、およそ議員活動の自主性を尊重することとは別次元の問題であって、それは決して議員活動に対する不当な干渉や介入ではなく、両者は矛盾しない」 とある。
今回の住民監査請求は、「政務調査」とは思えない写真代や、事務諸費、一千万単位の切手購入など、明らかに「合理的な疑問」があるために、出されたもの。その疑問を解消するためには、市長が何らかの調査を行って然るべきだし、調査権の濫用にあたるとは思えない。
にも関わらず、市監査委員は「合理的疑問なし」と断じ、市長は政務調査費の使途について調査するほどではない、と断じている。当の市長自身も報道番組に出演した際に、「政務調査費は議会のことだから、議会でしっかりやって欲しい」と他人事のようなコメントを出していたが、今月、26日には京都府議会に対して7500万円の返還勧告、27日には川崎市議会に対して1億2千万円の返還勧告、28日には旭川市議会に対して300万円の返還勧告が出ていることとの「整合性」がとれない、とまともな感覚を持つものならば誰だって思うだろう。
監査委員の「監査」という仕事、市長の仕事は一体、誰のほうに向けられてなされるべきなのだろうか。議会や議員との争いごとやもめ事をさけるために行われるのだろうか。そんなはずはあるまい。市民の納得が得られるよう行うのが筋というものだろう。であれば地方自治法が定める政務調査費について「よそはよそ、うちはうち」という論理が成り立つはずはない。
今回の監査では、政務調査費に関わる「闇」は一切晴れなかったが、唯一、監査委員や市長が、明後日の方を向いて仕事をしているということだけは明らかになったと言えるだろう。
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