どちらが「独自の基準」か?
福岡市の政務調査費については、以下のような基準しかない。
https://www.data-max.co.jp/shisei/2007/12/mail12-05/s-12-05_01.htm
(福岡市政務調査費に関する条例施行規程第3条)
この基準の最大の問題は、「調査研究」という言葉をどのようにも解釈しうる、ということである。しかもご丁寧に「その他」という項目まで設けてある。このような基準しかないのであれば、いくらでも「調査研究」の余地を拡げることができる。
しかし、そこは市民の代表である議員が使うので、よもやおかしな使い方はしまい、きっと市政に反映してくれる調査をしてくれるはず、と「信頼」すればこそ、この程度の基準でよい、ということではなかったか。
言葉を換えれば、この基準は市民と議員との「紳士協定」だったはずだ。「紳士協定破り」が横行した。「資料作成費」として、調査研究でなく、政治活動用のパンフレットや名刺の作成に使われたり、「資料購入費」として、議会審議とは関係ない新聞や雑誌の購読料として使われたり、甚だしきは、住宅地図の購入にも使われていた。
これらの用途を「基準から逸脱していない」と考えるほうこそ無理がある。
住民監査請求をした市民オンブズマン福岡としては、これら「協定破り」を踏まえ、住民監査請求に際して、他の自治体における監査結果や包括外部監査の結果や政務調査費に関する判例などを参考に平成18年度の政務調査費について、
(1)市政に関する調査研究に資するために必要な経費の支出であることが領収証からも
明らかになっているもの
(2)市政に関する調査研究に資するために必要な経費の支出とは認められないもの
(3)収支報告書の記載内容が実際の支出内容と大幅に相違していたり、支出内容が市政
に関する調査研究に資するために必要な経費の支出であるか否か、あるいは使途基準に適
合しているか否かを確認できないもの
三つに分類している。また、政務調査費に関する基準の解釈を明らかにしている。
(http://www.ne.jp/asahi/ombuds/fukuoka/pdf/07102juminkansa.beppyou.pdf)
しかし、この分類について福岡市監査委員は、「監査結果」のなかで、「会派又は交付対象議員により政務調査費が適正に支出されているかどうかについては、現行の本市使途基準との整合性においてのみ判断されるべきであって、請求人らが主張する独自の基準に反しているとの訴えをもとに、その返還を求めるということはできないものであり」と、あろうことか、現行基準の不備を認めるどころか、より常識的、妥当だと思われる市民オンブズマンの側の解釈を「独自の基準」と決めつけている。
つまり、これは、現在の基準はいくらでも「調査研究」の余地を拡大できると解釈できるが、基準は基準なので、議員が「調査研究」と考えればどのように使っても構わない、と言っているのである。
全く、一般常識、庶民感覚から逸脱した感覚としか言いようがない。一体どちらが「独
自の基準」と言えるのだろうか。他の都市では、返還勧告がきちんと出ていることを考え
れば、福岡市監査委員の法解釈こそ「独自」と呼ぶに相応しいであろう。
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