地方自治体の借金はなぜ増えたのか
どうして地方団体はかくも膨大な借金をこしらえてしまったのか。
それは政府の政策に忠実に従っていたからだ。小渕内閣のとき、政府はバブル崩壊後毎年景気対策を実施した。わが国では地方団体も巻き込み景気対策が行われるのが通例で、補正予算で追加される公共事業の多くは地方団体で実施されたのだが、その際の地方の財源は地方債で賄われ、その償還財源は全て後年度の交付税を上乗せして補填するとされていたのである。
自己の持ち出しなくして仕事ができるというので、地方団体はこぞって追加の公共事業に取り組んだのである。当時比較的冷静で公共事業の追加実施に乗り気でない地方団体に対しては、積極的に応じるよう個別に政府から強力な指導すらあった。
かくして全国の地方団体は借金まみれとなり、今その元利償還のピークに達しているのである。
元利償還がピークなら、上乗せすると政府が約束した交付税の額もピークでなければならないのだが、現実の交付税総額は平成12年度当時と比較し大幅削減である。
これは一体どうしたことか。政府の説明を聞くと、ちゃんと上乗せしてあるとのことだ。確かに交付税の算定の中身を見ると、過去の地方債元利償還費は計上している。
しかし、それ以外の部分を大幅に削減したので、交付税として交付される額は大幅に減っているというわけだ。これをたとえて言えば、「残業手当は満額支給するから、しっかり残業してくれ」と言う社長の言葉を信じ、一生懸命残業に励んだ従業員が、いざ給料をもらってみると手取りは大幅に減っていた。
再び社長の言によると、「約束どおり残業手当は満額支給している。しかし本俸の方をこっそりと大幅に削らしてもらったので差し引きの結果手取りが減っているに過ぎない。」ということだ。
これではまるで詐欺かペテンにかかったようなものである。
つづく
片山善博/鳥取前知事・慶応大学教授講演動画(初回と同じ内容です。)
https://www.data-max.co.jp/kensei/2007/12/mail12-03/k-12-03_01.asx
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