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激変する環境に耐え切れなかった老舗企業(2) 昭和地下工業(株) | 倒産を追う
特別取材
2007年12月13日 16:26

公共工事抑制の影響大

 だが、ピーク時を境に同社の業績は停滞、減少傾向となっていく。これは公共工事の抑制がはじまったことが主たる理由であるが、発注機関別の請負額を例に取ると、公共工事は98年の約2,644億円から06年の約1,228億円へ激減しており、8年連続の下落で約54%の減少。とくに九州地方は公共工事の依存比率が高いとされている。

 官公庁からの受注に頼っていた同社は、このような事態の対策を含め、公共工事だけでなく民需をターゲットとして営業展開を図った。もともと官公庁をベースにした営業展開からの脱却が進まなかったことや、厳しい市場環境のもと、下請工事での利幅を得られなくなったことなどが影響し、業績は下降線を辿っていった。

 こうしたなか、ついに05年4月期には20億円を割り込む約17億2,800万円の売上高となり、破綻前の07年4月期には、約13億300万円まで落ち込んでしまう。短長合わせた借入金は6億円を超え、月商倍率換算5.5カ月と、重い借入金負担が経営を圧迫していた。また、収益面も落ち込みが激しく、前期は営業損益段階で約1億4,900万円の赤字を計上。当期利益では約1億5,000万円を超える赤字となるなど、厳しい台所事情が浮き彫りにされていた。

従業員が集まらず再生断念

 今回の倒産の後、何とかして同社を立て直そうという動きが見られたこともたしかだ。
 同社の下請協会の会長と社員の代表が、福岡地区に本社を置く特殊土木業者を訪問。同社の再生に対する相談を行なっていた。相談された関係者は「破産を宣告した会社代表のもとに、下請協会の会長、スポンサー、従業員の組合の代表が集まり、3人で話し合いの場を持ち、破産を民事再生法に切り替えて昭和地下工業の再生の足掛りにしなさい」と指南。もっとも問題視されていたスポンサーの確保について、指南役が「責任もってスポンサーを見つける」と公言していたこともあり、これで同社の再生計画も順調にいくと思われていた。すべてが再生の方向に向きかけていた矢先のことだった。

 全従業員のうち事務関係と営業関係は残ったものの、工事主力の直接施工部隊の技術関係者のほとんどが、すでに再就職に走っていた。元社員を説得し、再生を働きけることに奔走したものの、同社を運営できる人数を確保できなかったと聞かれ、結果、同社の再生計画が日を見ることはなかった。

 土木関係者によると、今回の倒産劇は公共工事の激減に企業が耐え切れなった点に帰結するという。そして、かつて公共工事に頼りっきりだった土木業界は、その生命線だった公共工事の減少に加え、談合問題がクローズアップされたこともあり、入札価格の下落という問題にもさらされている。そうした複数の環境激変のなか、企業の収益減少による企業体力低下が叫ばれているのも事実だ。今回、破綻した昭和地下工業も過去の栄光を捨てきれず、企業改革が進まなかったことで、市場環境の変化を見誤ったのではないだろうか。

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