売上大幅に落ち込む
西友本社では、西友生え抜きの役員が6月末までに1名を残して退任。代わって三菱商事出身の野田亨COO(最高執行責任者、サニー社長兼務)はじめ、首脳部はウォルマート出身者と同社の招聘した外部からの人材で占められるようになった。これまで、ウォルマートとの間で緩衝材の役割を果たしてきた西友出身役員の退陣で、ウ社の意思がストレートにサニーに反映されるようになる。
ウォルマートの意図とは裏腹に、現場では混乱が広がっている。サニー関係者によると、下期(7月以降)に入ってから売上は前年同期比10%減、最大15%落ちている店も少なくないと言われる。販売の要である店長ら中堅幹部の大量退職で、店頭の販売力が低下していることが大きい。残った店長らの士気も低下している様子で、福岡市内のある店長は「退職金でローンが払い切れなかったため残った。できれば辞めたかった」ともらす。残留した社員に、西友グループで最大の稼ぎ頭なのに、なぜ人減らしをするのかという釈然としない感情が強いのはうなずける。
売れ行き不振は、仕入機能が西友本社に統合され、地域の需要とミスマッチが起きていることも大きな理由。上述の店長は「九州の店舗を見たこともない本社の人間が仕入業務をやるのだから、売れるわけがない」と吐き捨てるように言う。重要な機能は本部に集中し、現場は本部が決めたことを忠実に実行すればよいというのが米国で生まれたチェーンストアシステムで、日本でもかつてのダイエーなどがそっくり真似していた時期がある。ウォルマートは米国方式をそのまま国内に適用しているように見える。
サニー関係者は「西友で起きたのと同じことが起きている」と話す。西友では、ウ社のシステム導入に伴う作業手順の変更などで販売員の負担が増加、人員減も加わって接客がおろそかになり、売上を大幅に落とした。サニーでも、せっかくのシステムが活用されず、混乱を引き起こしているだけというのだ。
ウォルマートのシステムを先行して導入した西友は売上低迷から脱却できず、今期も6期連続の赤字を免れない。現場の創意工夫を重視する日本流と、頭脳を本部に集めシステム中心に運営する米国式が相容れないことが根本にある、と指摘する声は多い。
システムを軌道に乗せることが長引き、現場の疲弊が続くようだと、西友の二の舞になりかねない。大量退職した幹部や社員はライバル企業に流出し始めている。福岡都市圏を代表するスーパーだったサニーが同業他社の草刈場になろうとしている。
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