本誌IBでも掲載した、吉野家ホールディングスの安部修仁社長。彼の経営学が記された『逆境の経営学』(日経ビジネス記者 戸田顕司著)から、安倍氏の思想、信念を学んでいく。
『値頃感は数で決まる』~プライシング~
同書では、2006年9月18日から期間限定で牛丼販売を再開した時の価格決定のメカニズムを中心に述べられている。
①会社や商品のポジションを見極める
②消費者のイメージを形成する
③客観的な値頃感を意識する
以上のフローで、安部社長は市場で様々な実験を行ない、380円という価格に決めた。その決め手は、「競合比較や原価積み上げではなく、自らのありようを踏まえて、値頃感を捉えて価格決定しよう」という真の顧客目線に立った信念の表れと言えよう。加えて、1980年の倒産に至った大きな原因の一つで、店舗数急増による牛肉不足発生でお客様を見なかった値上げを実施したことの怖さを、安部社長が学んだのである。机上でなく、実務で構築された価格決定である。
又、安部社長の人間味を醸し出しているエピソードは、必読である。
(つづく)
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