建設業界にとって2007年は受難の年だったと言えるだろう。公共工事抑制は続くものの、民間需要に引っ張られる形で、建築市場は活況を呈していた。それはマンション建築主体であり、利幅は薄いものの、手持ち工事の多さは業界全体にある種の安心感を生み出していた。ところが6月20日の改正建築基準法の施行が、こうした業界の状況に冷や水を浴びせる格好になってしまった。
廃業が増える土木工事業者
公共工事の抑制が依然として続いている。国および地方自治体の財政状況を考えれば、やむを得ないのだが、発注工事の減少に合わせて工事の予定金額そのものが削減されており、この受注単価の下落が各業者を悩ませている。とくに九州地区は、全国でも公共投資に対する依存度が高い地域でもあり、その影響は大きい。
弊社では「2007年版ゼネコン特別レポート」を発刊したのだが、その取材過程で印象深かったのは、公共工事が利益面で足を引っ張ったとの意見が多かったことである。粗利率が低下していたり、赤字に転落していたりする場合、その原因を聞くのだが、決まって公共工事で採算が取れなかったとの回答だった。
建築工事業者の場合、公共工事で利益が取れないようであれば、民間受注の比重を増やすことが常套手段。マンション市況が活発だったこともあり、実際に民間工事受注の比重が増加した企業が多いようだ。
ただ土木工事業者の場合はそうはいかない。受注の大半を公共工事に依存している業者にとっては、公共工事が生命線である。「なんとしても受注しなければ」という思いは強いはずだが、一方で最近では不落(予定金額の範囲に入札金額が届かず落札されないこと)が増加しており、予定金額の厳しさを如実に表す結果となっている。さすがに赤字覚悟で落札するわけにはいかないからだ。
こうした傾向が続くようであれば、落札するのは前渡金欲しさに赤字覚悟で入札する、資金繰りの厳しい業者ばかりということになり、工事の質の低下を招きかねない。談合に対する批判の強さから、こうした事態に陥っているのだが、質と金額のバランスには、行政側ももっと研究が必要だろう。受注しても赤字を垂れ流すだけとの理由から、廃業を決断する土木工事業者も多くなってきたことも頷ける。
つづく