偽装が相次いで発覚するなか、その後の明暗は分かれている。「白い恋人」の石屋製菓はいち早く営業再開を果したが、赤福、船場吉兆は営業再開のメドすら立っていない。その差は、偽装発覚後の対応にあった。経済産業省は、製品事故が起きた際のマニュアルを作成し、企業へ配布するそうだが、お粗末な経営者が増えたものだ。
マニュアル化?
謝罪会見のコツを指南したハンドブックを経済産業省が作った。題して「消費生活用製品のリコールハンドブック」。製品事故が起きた時、企業が回収などを行う手順をまとめたマニュアルだ。緊急会見の開き方まで書いてある。「緊急記者会見における基本姿勢等」として、実施上の注意点を列挙。こんな具合だ。()内は筆者による注意点の意味。
・「事実を伝え、情報を隠匿しない」(情報を小出しにするな)
・「早急に実施(リコール実施決定後1~2日以内)」(グズグスするな)
・「表明内容は、必ず経営トップの責任で作成」(トップが会見に出ろ)
・「消費者、報道機関等の目から見て誤解を与えない内容」(責任転嫁するな)
経産省が箸の上げ下げまで手ほどきする。会見でお粗末ぶりをさらけだした経営者があまりにも多すぎたからだろうが、苦笑を禁じえない。30万部印刷して、年明けから企業に配布するそうだ。
「白い恋人」人気回復
「白い恋人」は11月22日、3ヵ月ぶりに営業を再開。道内約400の土産店で販売を始めたところ、売り切れの店舗が続出したという。発覚後の真摯な姿勢が、信頼回復につながったといえる。
石屋製菓(札幌市)は1947(昭和22)年、石水幸宏氏が澱粉加工業として創業。その後、駄菓子製造に転じた。76(昭和51)年に、ホワイトチョコタイプの「白い恋人」を発売。清新なネーミングと斬新なパッケージ、全日空の機内菓子に採用されたことが追い風になり、大ヒットした。道内限定販売という手法で、北海道土産としてブランドを確立。道内土産トップの売上高を誇った。
賞味期限改ざんが発覚したときの社長は、「白い恋人」の考案者で、2代目の石水勲氏(63)。対応は早かった。発覚からわずか10日後に、社長辞任を表明。後任に、メインバンク北洋銀行の島田俊平常務(59)を招いた。
さらに、不正を生む一因になった「なれ合い」の一族経営から脱却する姿勢を示すために役員を大幅に入れ替えた。役員5人中4人を石水家で占めていたが、勲氏の長男・創氏(25)が留任したほかは、全員が退いた。
石屋製菓は、株式を創業家が握っている同族企業で、石水家の家業である。勲氏は「経営には関与しない」と明言。自分は身を引く代わりに、家業を継がせるために長男だけを役員に残したわけだ。
「白い恋人」は迅速な対応が信頼回復の決め手になった。
つづく