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積水ハウスの興亡史 (24) 経営は人なり | 愛する積水シリーズ
特別取材
2007年12月25日 09:48

 積水ハウスは田鍋の想定外の発展を続けていた。田鍋も就任当時、ここまで発展するとは思っていなかった。「まさか、ここまで発展するとは、夢にも、思わなかった」と述懐している。

 昭和40年、50年代は石油危機を二度も経ながらも、高度成長期で住宅需要が増大し、プレハブ工法が社会のニーズに合ったことと、政府の住宅建設の奨励策が後押ししたこともあり、急成長を続けていた。その間、新規参入してきた同業他社のいくつかが敢え無く消えていったのと比べ、田鍋の実践してきた経営哲学が会社の発展に大きく寄与した。「経営は人なり」を実践したのである。

世間では、当時(今もそうであるが)アメリカ式の管理経営が先端的経営と言われていた。そうした風潮の中、皆ぼろ船に乗った運命共同体を形成し、この真髄は「全員参加の経営」であるとして、労使もなく、組織は必要だが、人間としての上下もない、やる気のある若い社員に権限委譲をして「人を大切にする経営」を貫いてきたのである。

 世界一の企業と言われるトヨタも、かたくなに日本式経営をとり続けている。積水ハウスとは内容は違うだろうが、基本は人、社員を大切にということでは同じことだろうと思う。星野ジャパンの監督星野も全員参加の哲学を持っていた。

北京行きが決まった瞬間、「選手達が日本野球の底力を見せてくれた」と声を詰まらせ、「このメンバー全員で北京に行きたい」「頼もしかった」と選手達への感謝の言葉が次々飛び出す。台湾に連れて行きながら、登録メンバーから3人をはずした時、星野自ら、選手の部屋を回った。非情の中にも情もある。その星野が「組織というのは、結局、人や!」と言っていた。

 経営も、野球も、組織は人心掌握術なしでは語れない。田鍋のように、人を大切にする経営をとり続けていたなら、積水ハウスが大和ハウスの後塵を拝することはなかったのではないか。組織は人、人の心が乱れていれば、ひとつの力とはならない。積水ハウスは住宅部門ではまだトップと、自認しているかも知れない。

しかも、住宅外の他事業で差をつけられたという認識かも知れない。しかし、住宅業界でトップになったことで、大和ハウスのブランド力は一段と上がり、社員の士気も上がる。安閑としてれば、近いうちに住宅部門も追い越されるだろう。

 田鍋の人を大切にするという経営哲学の原点に戻り、積水ハウス、現社長、役員が猛省することを促したい。(文中敬称略)

野口孫子


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