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流通業界、相次いだ企業・店舗買収|IB流2007年総括シリーズ
特別取材
2007年12月27日 09:00

 九州流通業界では、今年も勝ち組企業によるM&A(合併・買収)や店舗買収が相次いだ。独自の店舗戦略や低価格を武器に快進撃する新興業態・新興企業と、既存勢力の企業間格差が拡大し、新旧交代が鮮明になった1年でもあった。11月からは、まちづくり3法が全面施行され、流通業界の主戦場は近隣型商業施設に移行すると言われる。今後、業態を超えた企業間競争がますます激化することだけは間違いない。

 【図表】九州流通企業(チェーンストア)売上高上位20社(家電を除く)

広域SMを目指すユアーズ

 今年早々から業界を驚かせたのが、丸和=ユアーズによる石原商事支援。石原の48店(破綻時)のうち、丸和が北九州の店舗、ユアーズが広島県の旧おおうちの店舗を継承、それぞれドミナント効果が見込めると判断した。ユアーズの狙いは、中国地方東部から北部九州にまたがる広域チェーンを作ることであり、仕入を統合することにより原価引き下げの効果も期待できる。ユアーズの売上394億円と丸和の364億円に、石原の売上を最盛期の半分の60億円と見ても、合計すると818億円の規模になる。
 とはいえ、8月には支援グループの一翼を担っていたKSG(九州スーパーマーケットグループ)が離脱。KSGが商品を供給していた福岡・日豊地区10店の大半は閉鎖に追い込まれた。
 ユアーズの支援で、丸和は7月中間期に増収増益を達成、黒字体質をほぼ定着させた。正社員を3分の1に減らすなど、払った犠牲も大きかったが、M&Aの成功例にあげられる。石原店舗が狙い通りに再生できれば、かつての負け組が一転して勝ち組に変わる可能性もある。

スピナ、西鉄傘下で攻勢

 2月、西日本鉄道の子会社になった㈱スピナは、三菱化学子会社が八幡西区に持つ「スーパー協和」3店を譲り受けた。スピナは、もともと黒字体質の優良会社だったが、新日本製鉄の傘下では、新規出店ができなかった。西鉄グループの北九州地区における流通事業の中核会社という位置付けが明確となり、経営が積極路線に転換。10月には、サンリブ本社の目と鼻の先となる小倉北区大手町に、西鉄グループがショッピングセンターを開発し、そこに出店した。老朽化した小型既存店のリニューアルにも着手する。
 西鉄本社は、西鉄ストアとスピナの実質統合を進める意向。それぞれの店名は残しながら、物流や仕入などの共同化でメリットが期待できるものに関して一体化を推進すると見られる。西鉄ストアの売上に、スピナの175億円(SM部門)を加えれば、売上高合計690億円となる。今期は旧スーパー協和3店の売上32億円が加わることで、700億円突破は確実。西鉄によるスピナ買収は、親会社が大企業同士で体質もよく似ていることから、理想的なM&Aだったと言える。

時間を買ったマミーズ

 7月にはマミーズが㈱日の出屋を、9月には山口県宇部市に本拠を置く㈱丸喜が㈱サンシズカを傘下に収めた。マミーズは03年8月の設立以来、積極的なM&Aを展開し売上を急拡大している。日の出屋は04年9月の三池商事(店名「サンショー」)、06年5月の㈲千歳屋に続く、3社目。この間、既存店舗の買収も行なっている。日の出屋は筑後地区で10店を展開していたが、競争激化で生き残るのが難しくなると判断、オーナー一族が売却に踏み切った。
 地方のスーパーが短期間に3件ものM%Aを行なったのは全国でも珍しい。同社の近藤吉宏代表取締役会長は「年商200億円がSMの生き残る最低条件。そのためには新店を作っていては間に合わない」と狙いを話す。日の出屋買収で単純計算では200億円に迫る(07年3月期は128億7,400万円)。バイイングパワーの拡大をテコに値入率を改善することで、利益拡大を図る。近藤社長は「良い案件があれば今後もM&Aを行なう」としている。

丸喜はサンシズカ買収

 丸喜によるサンシズカ買収も、勝ち組による救済型M&A。サンシズカは、下関市一帯でSMのほかにディスカウントストア(DS)や酒DSを展開し、ピーク時には124億円を売り上げていた。競争激化で相次いで店舗閉鎖を余儀なくされ、売上高は73億円にまで減少していた。
サンシズカは12店のうち、不採算店5店を閉鎖、残る7店を新会社に分離。この会社の株式を丸喜に売却し、スーパー事業から撤退した。
 丸喜は手薄だった下関に店舗網を拡張。年商も単純計算で300億円近くになり、山口県のSMではトップの丸久との差を縮める。ただ、下関周辺は丸和のほか、マックスバリュ西日本、トライアルカンパニー、コスモス薬品などの新旧勢力と異業態が入り乱れて競争。丸喜のテコ入れが成功するかどうか、予断を許さない。
 ドラッグストアでは7月、JR九州がドラッグイレブンを買収した。多角化を推進しているJRにとって、ドラッグは駅ビルや駅ナカでも展開でき、鉄道事業と相乗効果が見込める。
ドラッグイレブンはファンドの傘下で出店が抑えられ、前期の売上高は396億円と、後発のコスモス薬品の3分の1強にまで引き離されていた。JR九州グループ入りを機に年平均10店を出店、「周回遅れを取り戻す」(本郷譲社長)としている。

(工藤 勝広)


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