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特別取材

積水ハウスの興亡史 (27) 偽 | 愛する積水シリーズ
特別取材
2007年12月28日 11:29

 毎年、京都清水寺の貫主が太い筆で、一年を象徴する漢字を書いてみせる行事がある。今年そこで選ばれ、書かれたのが、何と、「偽」であった。人々は今年の世相から、政治と金の汚い偽り、老舗の名店と誇っていた名物菓子店、船場吉兆のごまかし、年金のごまかし、国を守るべき防衛次官の賄賂、どっちを向いても信じられないことばかり。いつの間にこんな汚い国になってしまったのか!そんな国に繁栄があるわけがない。昔の日本を訪れた外国人は日本人の気品の高さと礼儀正しさに驚嘆し、尊敬していたという歴史がある。

 瀬戸内寂聴さんが「仏と申すは正直を本とす」と言っていた。釈尊は正直を根本としておられるという意味。老舗が老舗たる所以は「信用」の二文字、これをないがしろにしたら立ち行かないはずだ。

 働く人たちの意識の変化も印象づけた。「こんなことでいいのか!」と疑問を持つ、現場からの内部告発に揺さぶられた年だった。内部告発の保護法も機能した。不正に対し隠蔽体質を引きずっている企業は生き残れないことを肝に銘ずるべきだ。

 孔子の言葉(論語)「仁を欲すればここに仁至る」。自分が真剣に仁を求めれば仁は今ここに現れる、という意味。仁とは他者への思いやり、人間愛。積水ハウスの経営の基本理念と同じである。

 積水ハウスとしては、田鍋が作り上げた、人間愛という基本理念を忠実に守っていれば、偽、ごまかし、はありえないことである。しかし、社内ではコンプライアンス、CSR(企業の社会責任」)とかやたらと横文字を使い啓蒙しているが、トップ以下真剣に魂を入れているようには思えない。社員の魂に響いていないのではないか。形式でやっていればいいという風潮になってはいないだろうか。
例をあげれば、広島、江田島市江田島にある海上自衛隊の第一術科学校。この学校の前身は海軍兵学校、世界三大兵学校のひとつと謳われていた。この学校の幹部候補生たちは五省訓(NO14,で前述)を毎日黙読している。明治の元勲東郷元帥が唱えたものである。

1、至誠に悖るなかりしか(真心に逆らうことはしてないか)
この伝統ある第一術科学校がイージス艦の中枢情報の漏洩事件の舞台のひとつになった。逮捕された三等海佐はイージス艦の機密情報を持ち出し第一術科学校の教官、三佐に渡し、三佐から乗務員、学生に広がった。

2、言行に恥ずるなかりしか(言うことやることに恥ずかしいことをしてないか)
毎日、元兵学校で唱えていても、このような体質では国を守る気概もないように見える。お題目だけで、行動が伴わなければ、形式だけで、魂が入ってない証ではないだろうか。
積水ハウスの田鍋の残した「人間愛」を真に実践したなら、積水ハウスの「日はまた昇る」日も近いだろう。


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