慌てて出された追加策
改正直後は静観していた建設関連業者も、7月、8月と一向に改善が進まない国道交通省の対応に次第に怒りを募らせ始めた。8月に至っては半数の県で工事着工がゼロという衝撃的な調査結果も出たことで、建設関係企業の不満が爆発。とくに中小企業にとっては、工事の遅れは資金繰りに大きな影響を及ぼすものであり、場合によっては資金ショートを招きかねない。
実際に福岡でも10月には建築基準法改正に伴う受注減少を理由とした倒産もあった。こうしたことから徐々にマスコミからの批判も強まり、国土交通省は追加策を打ち出すのだが、これらの追加策にも疑問を感じる部分が多い。
国土交通省と中小企業庁が中小企業に対する金融支援を打ち出した。これは建築確認、建築着工の減少などによる影響を受ける建築関連の中小企業に対して、①セーフティネット貸付制度と②セーフティネット保証制度を措置するもの。セーフティネット貸付制度は、政府系中小企業金融機関が運転資金を融資するもので、建築確認、建築着工の減少などによる影響を受ける幅広い業種が対象。一般の貸付と比べて融資限度額や元金返済据置期間などに優遇措置があり、担保条件の特例制度も利用可能である。
セーフティネット保証制度は、各都道府県の信用保証協会が債務保証を行ない、民間金融機関からの融資を受けやすくするもの。一般保証と比べ保証限度枠が別枠になるとともに、割安な保証料での保証が可能である。
こうした融資・保証制度は中小企業にとってはありがたいものだが、制度上の問題もある。思い起こされるのは、金融不安を背景に銀行の「貸し渋り対策」として実施された安定化特別保証制度。従来の保証協会の保証枠30兆円をさらに20兆円増やし、中小企業に対して銀行からの融資を実行させた。
半ば強制的に中小企業へ資金を注入する形となり、保証協会の審査は「ザル」と揶揄された。大甘審査の結末は焦げ付きの多発。ただし銀行は保証協会の保証があるためノーリスクであり、銀行支援の政策ではないかとの批判も浴びた。今回の金融支援策は、こうした過去の二の舞になる可能性を孕んでいる。
改正建築基準法に伴う様々な問題は、時間を置いてそのツケが消費者に回ってくることは間違いないだろう。長期化すればするほど損失が膨らむことは自明であり、国土交通省には一刻も早く事態を収拾し正常化させてもらいたい。