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積水ハウスの興亡史 (14) 防衛省守屋次官収賄事件 | 愛する積水シリーズ
特別取材
2007年12月 7日 11:04

 話はまた逸れるが、まだこんなことをしてるんだあ、言うというのが一連の防衛省疑惑を受けての率直な感想である。蟻が群がるように、利権のあるとろには権力を利用して甘い汁を吸おうという輩が集まってくるのは、今も昔も変わっていない。防衛省のトップがやっていることなのだから、この国が根底から腐り始めている証拠かも知れない。

 古い話だが、「旧帝国海軍の五省」があった。これは海軍の士官以上の幹部に対する倫理観、姿勢を説いたものである。
1 至誠に悖るなかりしか、(真心に逆らうことはないか)
2 言行に恥ずるなかりしか(言うことやることに恥ずかしいことをしていないか)
3 気力に欠くるなかりしか(やる気を持っているか)
4 努力に憾みなかりしか(努力をしなかったことを後悔していないか)
5 不精に亘りなかりしか(怠けることを続けていないか)

国を守るべき指揮官達に、こんな立派なことを叩き込んでいたのだ。

 国敗れたとは言え、なぜ、よき伝統が消えてしまい、口先だけ、倫理観を持て!法律を遵守せよ!とジェスチャーをしているようになってしまったのか。そして、それを唱えているシビリアンコントロールの名の下の軍の最高責任者が、この体たらく、国民の不信は募るばかりである。

 同様のことが、民間でも日常茶飯事に起こっているのではないか。民間同士は贈収賄事件にはならないが、権力を利用した個人への、バックリベート、賄賂は後を絶たないのではと思う。私腹を肥やすのは権力者だけ。それを見ている社員の志気、モラールは落ちるばかりである。

 最近の一連の偽装事件は内部告発から発覚している。社長、役員が錬金術、拝金行為に走っていれば、社員の会社へのロイヤリティなぞ、あるわけがないのではないだろうか。そんな土壌の中から、義憤にかられ、自分の会社の非を告発しているのだろうと思う。また、守屋次官もそうだったようだが、経営者は自分のやっていることは棚上げして、自分は何やってもいいという思い上がりがあるのか、厚かましくも、コンプライアンス(法令順守)を声高に大合唱♪しているのである。社員は馬鹿ではないから、見せ掛けにしか写らず、かえって反感を持たれるのが落ちであろう。

 前述したように、日露戦争の乃木将軍、国鉄改革をした土光氏、そして、このシリーズの田鍋、いずれの方も私利私欲に走らず、謹厳実直な人柄、質素な生活態度、思いは国、会社、部下のことだけ。こんな指導者の下から、内部告発は無いだろうと思う。
 積水ハウスで、今年9月、名古屋、東海地区が営業停止処分が国交省から出されたのも、内部告発と言われている。このことは、積水ハウスの内部にモラルの低下をきたしている証かもしれない。田鍋なき積水ハウス、いつの間にか、権力におもねる集団に変化してるのではないだろうか。

 田鍋は「全員参加の経営、労使は無く、労労だ、皆な運命共同体だ」と「人を大切にする経営」をやってきた。そのような田鍋が築いてきた経営の原点に戻らないと、昨年、30年以上続けてきた業界トップの座を大和ハウスに明け渡して、再び、取り戻すことはできないのではないか。
守屋次官事件に鑑み、積水ハウスを愛する者として、危惧を持って警鐘を鳴らしたい。(文中敬称略)


野口孫子

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