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積水ハウスの興亡史 (19) 士気(モラール)の高揚 | 愛する積水シリーズ
特別取材
2007年12月17日 10:06

 積水ハウスの経営は、前号で記述した、昭和59年(1984)の減収減益を出した状況と似ている。大企業の業績は良いのだが、中小企業はまだ、景気の浮揚は見られない。国民の将来への閉塞感も強く、住宅着工の大幅増も見込めない。加えて、耐震強度の偽装事件で建築基準法が改正され、建築確認申請業務が大幅に遅れ着工が出来ない状況が続いている。

 積水ハウスは、平成19年(2008)1月の決算を、当初の社外発表数字から減額修正して発表している。景気の悪化というのが大きな原因ではあるだろうが、中部東海地方での営業停止処分も影響しているのではないだろうか。

しかし、こんな時こそ、田鍋であれば、一致団結、運命共同体の精神で、乗り切ろう!と言っただろう。現在の積水ハウスにはその気概が薄れてるような気がする。社内の不協和音も漏れ伝わってくる。社員のモラールの低下が心配である。

ナポレオンは「軍隊にとり、大切なのは、モラールである」と言って、軍隊の士気高揚に努め、ヨーロッパ全土を席巻した。中国の兵法を説いた孫子は「善く戦う者は勢いに求める。人に責めず(もとめず)」と、戦上手は何よりも勢いに乗せることを重視、一人一人に過度に期待しないというモラールの必要性を説いた。

 古今東西、組織の生産性の向上はモラールと切り離せない。リーダーとの信頼関係、コミュニケーションが不可欠なのだ。
再び、孫子から「上下欲を同じくする者は勝つ」。上も下も心をひとつにすれば、戦いに勝つ。高いモラールなくして、勝利はない。

 田鍋が危機のとき、社員に鼓舞したのはモラールの高揚だったのだ。和田社長のもと、一致団結、出来るかが課題ではないだろうか。20年前と大きく立場が違うのは、大和ハウスの後塵を拝していることである。トップではないのだ。大和ハウスの来年3月の決算の状況は分からないが、大和ハウスを追いかける立場なのに、差を開かれてしまう恐れもある。(文中敬称略)


野口孫子

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