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積水ハウスの興亡史 (29) 先憂後楽 | 愛する積水シリーズ
特別取材
2008年1月 8日 15:40

 昨日(1月7日)一斉に企業が動き始めた。一流といわれている各企業の経営者の今年の景気の見方は、概ね、前半やや下降気味、後半やや上昇に転じるという見方が多かった。しかし、危機は知らぬ間にやってくる。

 日本のGDPは1人当たりに換算すると、いつの間にか15年前の2位から18位まで落ち込んでいる。日本株を買っていた外国投資家は、政治の停滞、指導者の決断の遅さ、社会保険改革を代表した山積する重大政策を棚上げ、引き伸ばししていることなどに嫌気をさし、売りに転じ、日本は将来のない国とレッテルを張られた感がする。今回年初の株価暴落も波乱の幕開けを暗示しているのではないだろうか。

 積水ハウスにも同じことが言える。大和ハウスに売り上げで負けてはいても大差がついているわけではない。東京、大阪の一等地で、大型の超高級マンションの売れ行きが好調なのと、子会社の積和不動産による、積水ハウスのアパートの管理による賃貸事業の売り上げの増大で、かろうじて、大和ハウスに遜色ない数字が維持できているのが実態なのだ。

 しかしながら、田鍋の言う、本業、工場生産材を使ったセキスイハウスの、特に戸建(アパートはかろうじて維持している)が苦戦しているのだ。近代化された、工場生産ラインを安定的に稼動させなければ全国6工場の従業員を遊ばせることにもなる。資金力に任せて、東京、大阪の一等地を買い漁り、超高級マンションを販売しても、一等地には限りがある。いずれは優良地の仕入れはジリ貧になるだろう。そのとき代わるべき柱になる事業があるのだろうか。

 積水ハウスと大和ハウスの株価には、1月7日で200円以上の差がある。市場は会社の価値に差があると判断しているのである。今、求められるのは、本業をいかに立て直すかだろう。
 労働者、サラリーマンの収入の伸び悩み、地方の衰退、人口減による住宅着工減等の理由はあろうが、田鍋が幾たびかの危機を乗り越えてきたことに学ぶべきではないだろうか。現状を正確に把握して、今のうちに、真剣に、「先憂後楽」の精神で事に当たってほしいものだ。(文中敬称略)


野口孫子


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