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積水ハウスの興亡史 (33) 追想 | 愛する積水シリーズ
特別取材
2008年1月15日 13:33

 田鍋の社葬は平成5年(1993)9月8日、本願寺津村別院にて行なわれた。生前の田鍋の遺徳を偲び、各界の重鎮の方々、政界、官界、関西経済界、東京大学、旧制三高先輩、同級、後輩、数々の友人、知人、協力工事店の方々、取引先の方々、社員と、最後の別れに、全国各地から多数の参列者が集った。あまりの参列者の多さに、本願寺津村別院に入りきれず、1キロにもわたる行列ができ、そのあおりで、周辺は大渋滞が起きたほどだった。

 追悼の言葉の多くは、業界のリーダーとしての実績に賛辞を送るものだった。しかし、人々の共感を一番受けたのは、人間田鍋としての評価だったのではないだろうか。田鍋は飾らない人柄で、人情に厚い、人に優しい人間であった。社員、工事店の人たちは、「おやじ」と慕っていたのである。

 参列者からの追悼の思いを聞くにつけ、田鍋が作った、積水ハウスの経営の根本哲学、人間愛は、田鍋そのものだったことを認識させられたのである。田鍋の生き様、そのもののように思える。

 偉大な田鍋は去り、心の中に社内に空洞が出来たような状況下、しかし、一日たりとも、業務は待ってくれない。いよいよ奥井体制で、積水ハウスは船出していくのである。行く手には、田鍋が遣り残した、後継者問題、奥井と指名しながら去っていったが、奥井の営業経験のなさに、不満を持つ勢力が依然くすぶり続けるのであった。(文中敬称略)


野口孫子


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