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特別取材

下がり続ける会員権価格 バブル期皮算用の末路 | 倒産を追う
特別取材
2008年1月17日 10:15

(株)コハラ(大和不動カントリー倶楽部)

COMPANY INFORMATION
代表:小原 龍治
所在地:佐賀市大和町川上5576
登記上:佐賀市大和町梅野120-2
設立:1989年2月
資本金:5,000万円
年商:(07/3)4億6,435万円


 長崎自動車道佐賀大和インターチェンジに近く、交通アクセスにも申し分ない立地で、佐賀県内だけでなく、福岡地区にも数多くのゴルフ会員を有する大和不動カントリー倶楽部。そのゴルフ場を運営する地場業者(株)コハラが、2007年12月17日、福岡地裁に民事再生法手続を申請し、事実上倒産した。負債総額は約110億円が見込まれている。リーズナブルな料金設定と交通アクセスの良さで定評だった同ゴルフ場は、なぜ破綻したのか。その経緯を検証してみる。

地場振興を担い開業

 長崎自動車道の佐賀大和インターチェンジに隣接し、佐賀地区のみならず福岡地区からの利用者も多い大和不動カントリー倶楽部は、背振山地のふもとに位置している。のびやかに広がる南向きの丘陵を活用し、広々とした景観を持ちながら、自然の持ち味を活かしたコースレイアウトとなっている。有明海や佐賀平野を一望できる広々とした開放感が特徴で、「ややコース全体が短いものの、初心者や女性にも安心してプレーできるコース」と評判である。

 同ゴルフ場は、オレンジ貿易自由化の影響で経営が苦しくなった地場みかん農家らと旧大和町(現在は佐賀市と合併)から、地場の雇用確保の協力を求められたことが発端となり開設された。そして、同ゴルフ場の近隣にホテルや遊技場を経営する小原グループが、ゴルフ場の開設・運営を目的に1989年2月に設立したのが同社の始まりである。

 92年2月、縁故会員の募集を皮切りに、同年4月、ゴルフ場の造成に着手。6月頃から入会金150万円、預託金750万円の一般会員の募集をスタートさせ、合計380口を集めた。95年7月には開発資金約110億円を投じたゴルフ場が完成し、本格的な事業開始となった。

バブル期の構想計画の甘さ

 だが、同ゴルフ場が開場した時期には、バブル経済も終焉を迎えつつあり、経済は苦しい局面を迎えていた。さらに、隣接する背振山地内のゴルフ場との競合も激しくなり、厳しい情勢が続いていた。しかも、バブル期に構想されたことから、ゴルフ会員権の高騰を想定していたため、発売された会員権の預託金額が計画を下回ることは想定していなかったと聞かれる。

 同社は、ゴルフ場開発資金約110億円のうち、約67億円程度を預託金でおぎなうという計画を立て、96年度末時点で会員預託金約31億円を集めていた。98年ごろから同ゴルフ場の会員権の市場取引が始まったが、経済不況の煽りを受けて、300万円前後で推移。これにより発売価格の預託金750万円、入会金150万円、合計900万円の会員募集が困難となった。

 そこで、同社は会員からの預託金の返還請求が相次ぐことを想定、それに加えて取引銀行からの有利子負債の負担を軽減し、経営の安定を図ることが、会員の利益に繋がるとの判断から、従来の会員権1口を2口に分割し、預託金額を市場取引価格に近づけ、会員権の追加募集を図った。

 だが、日本経済の長引く不況の影響から、全国のゴルフ会員権の価格が下降傾向となり、同社のゴルフ会員権の価格も99年には175万円、2000年には150万円程度にまで落ち込んだ。これにより、追加募集が困難となり、70億円を超える有利子負債が同社の経営を圧迫し始めた。


ついに民事再生法申請

 このような状況のもと、05年7月に会員預託金の償還期限を迎えるにあたり、さらに会員権を2分割し、計4分割することを認める旨を04年8月に理事会で決定。できるだけ市場取引価格に近づけて会員の募集を行ない、経営の持続を試みた。しかし、慢性的な手持資金不足の経営状態から脱すことができず、加えて、メイン行の佐賀銀行からの金融支援も困難となったこともあり、07年12月17日に福岡地裁に民事再生法の手続を申請。同日保全命令を受け、事実上の倒産をした。

 これに対して同社関係者は「厳しい環境のもと、年間で4万4,000名前後の来場者があり、利益は少しずつ出ていたので、いずれは立ち直ると思っていました。今回の件は、銀行からの金融支援ができなくなったことがすべてだと思っています」と肩を落としていた。

 12月26日、同社は佐賀市内で債権者集会を開き、参加債権者に今回の経緯を説明した。なお、営業は継続されおり、今後のスポンサー企業の選定と交渉は、同社から受託した東京の業者が行なうとしている。

 近年、日本のゴルフ場において、入場者数の減少が進み、会員権購入者の手控えから、名義変更料は減収。とくに同社のような預託金返還時期を迎えつつあるゴルフ場においては、苦しい経営状況がうかがえる。そうしたなか、民事再生法などの法的申請を行ない、預託金を含むほとんどの債務をカットされたゴルフ場は新しく再生できるのだが、その被害が及ぶのは会員の人々であり、その多額の預託金は、ほとんどゼロに等しい価値となってしまう。破綻してプレーができない状況よりも、せめてプレー権だけでも、との思いが民事再生法手続の申請に同意してしまうのだろうか。

 今回の破綻の大きな原因は、銀行支援の打ち切りだったと関係者はコメントするが、近年の佐賀地区において、負債総額約110億円という金額はあまりに大きい。そして、その被害は会員の人々に及んでいるということを認識していただきたいものだ。


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