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後継者難で優良会社を売却 脱サラ経営者の決断(1) | 事業承継シリーズ
特別取材
2008年1月17日 10:51

(株)オークス建設 取締役会長 石井 泰俊 氏


 オークス建設の実質的な創業者である石井泰俊氏は、企業規模こそ小ながら銀行マン出身の創業経営者のハシリのような人である。取引先の建築会社オーナーに請われて入社し、任された子会社を年商26億円、経常利益率7.5%(06年12月期)の優良会社に育て上げた。手塩にかけた会社を昨年末売却し、自らはサラリーマン経営者に戻った。鮮やかな生き様を聞く。

銀行員から転身

 銀行マン出身の創業経営者と言えば、最近でこそ日本興業銀行出身で楽天を起こした三木谷浩史氏をはじめ珍しくも何でもなくなったが、かつては脱サラするのでさえ、周囲からいぶかられたものだ。銀行はつぶれないというのが定説だったから、寄らば大樹の陰で、30代でわざわざ独立する人など「何かあったのか」と白い眼で見られたのだろう。

 独立組でも成功した例は非常に少ないとされた。理由については、経理はできても営業は苦手とか、ハングリー精神に欠ける、頭が高くて前垂れ商法に徹し切れない、などと言われたものだ。
 石井氏が勤務していた西日本相互銀行(当時)から転職したのは1972年、35歳の時だった。取引先だった東建設(当時)の専務の東正信氏に見込まれ、「金ばかり扱っとらんで男の仕事せんない」と誘われたのがきっかけ。転職を決断したのは、一流大学卒でもなく「せいぜい支店長止まり」と先が見えていたこともあった。「銀行を辞めるというと、使い込みでもしたのかと言われた」と苦笑いする。

 その後倒産することになる東建設は、地場では知られた会社だったが、典型的な同族会社で、役員はすべてオーナー一族。オーナー社長はスカウトした石井氏に配慮して資本金1,000万円で「大楠住宅産業」という不動産会社を作り、役員として処遇してくれた。この会社が、紆余曲折を経て現在のオークス建設となる。東建設と2足のわらじをはきながら、大楠設立から3年後の76年、代表取締役社長に就任する。


つづく


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