私たちのビジネスは冠婚葬祭です。このビジネスは、好・不況の影響を大きく受けることはありませんが、人口動態の変化につちては影響を受けます。そこで、人口動態の数値を整理しておきます。
1.出生率の変化は、次のようになっています(少子化が顕著です)
1965年 1,823,697人
↓
2005年 1,062,530人
2.死亡率(死亡数増大は高齢化減少を表しています)
1965年 700,438人
↓
2005年 1,083,796人
3.婚姻件数(若者数の減少は、婚姻数の減少です)
1965年 954,852件
↓
2005年 714,265件
4.平均世帯人員(総世帯)(核家族が顕著です)
1965年 4.08人
↓
2005年 2.58人
5.平均寿命(世界一の長寿社会・高齢化社会の日本です)
1965年 男性67.74歳 女性72.92歳
↓
2006年 男性79.00歳 女性85.81歳
6.合計特殊出生率(1人の女性が生涯産む子供の数)
1950年 3.65人
↓
1965年 2.14人
↓
2005年 1.26人
7.生涯未婚率
1965年 男性1.50% 女性2.53%
↓
2005年 男性15.96% 女性7.25%
8.年齢別未婚率推移
1965年 男性 【25~29歳】45.7% 【30~34歳】11.1% 女性【25~29歳】19.0% 【30~34歳】9.0%
↓
2005年 男性男性 【25~29歳】71.4% 【30~34歳】47.1% 女性【25~29歳】59.0% 【30~34歳】32.0%
成熟化した冠婚葬祭ビジネスにやっかいな問題が発生しています。異業種格闘技競争という局面が急速に増加しているからです。この背景には、企業を取り巻く環境が大きく変化していることがあげられます。
まずは、この5年で変化した異業種のことを考えてみます。
1.電子マネーに強い企業はといえば、従来は、VIZA、マスターカード、JCBでした。それが現在では、スイカの登場で、JR東日本、NTTドコモ、セブン&アイなどの金融業界以外からの新規参入企業がいっぱいです。
2.音楽業界はどうでしょう。従来は、エイベックスやソニーでした。現在はipodのアップル社です。ドコモやKDDIなどの携帯電話会社もライバルです。
3.リーテル分野での収益性の高い銀行は、以前は3大メガバンクでした。現在は、セブン銀行の収益性が高いのです。セブン銀行は、コンビニにATMを展開しています。セブン銀行の19年3月期の経常収益は754億円、1万2000台のATMの1日の利用は、1台につき98件です。1日の手数料収入(100円として)だけでも、400億円となります。
4.世の中に情報発信している主体は、マスコミではありません。現在はネットで発信し、企業に影響を与えています。
なぜに、こんなことが起こるのでしょう。それは、3つほど考えられます。
1つは、日本経済の成熟です。日本は今や、GDP年2%程度の成長しかできない成熟社会化にあります。このような社会では、今までと同じことをやっていては成長することも生き残ることもできません。縮小していく市場をきめ細かくセグメンテーションして、小さくなるパイを分け合ってもしかたないのです。結果として、他業種へ進出することになるのです。
2つ目は、ITの発達です。異業種格闘競争を可能にしているのは、ITです。インターネットや携帯電話の発達が新たなサービスを可能にし、提供するコスト構造も変えました。従来では、経済性に見合わなかったようなサービスでも、採算が取れるようになりました。消費者の購買行動も日常生活も、ITによって大きく変わりました。また、それにふさわしい商品、サービスも求められるようになりました。ところが、既存の企業経営者の多くは、往々にしてITを武器にする発想が強くありません。ここに異業種格闘技を仕掛ける側の企業にとっての大きなチャンスが潜んでいるのです。
3つ目は、競争のグローバル化です。とりわけ金融と通信は顕著です。国内企業は、生き残りのために海外へ進出するでしょう。今後、好むと好まざるとに関らず、日本はグローバルな力を活用しつつ、グローバルな競争をしていかなければならないでしょう。
以上の3つの大波が、日本に同時に押し寄せてきているのです。ですから、私たちは「勝手を知った世界で、気心の知れたもの同士が戦う同一業界の同質競争」から、「何を考えているか分からない、あるいは自分たちと異なるビジネスモデルを持つ企業との競争のルールが異なる異質の戦い」へと突入しているのです。
つづく
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