グッドウィル・グループ(GWG)が絶体絶命のピンチに追い込まれた。厚生労働省は、GWGの子会社で、日雇い派遣大手の「グッドウィル」(東京都港区)に対し、2~4カ月の事業停止命令を発動する。労働者派遣法で禁じられている港湾での荷役業務への派遣や二重派遣が、その理由。
事業停止期間は、約800事業所のうち、浜松北など89事業所が4カ月、それ以外の事業所は2カ月。事業停止期間中は新たな派遣ができない。GWGは子会社の介護サービス大手のコムスンが昨年6月、事業所申請を偽ったなどとして厚労省の処分を受け、介護事業から撤退している。介護事業に続く、主力の人材事業の不祥事で、GWGの経営は一段と厳しい局面を迎えた。創業者である折口雅博会長兼最高経営責任者(CEO)(46)は経営責任をとり、代表権を返上、CEOも退任した。だが、度重なる不祥事にもかかわらず、折口氏が会長職にとどまることに批判は避けられない。年明け早々から、GWGに大激震が襲ったのである。
違法派遣が発覚
GWGが得意とするのは、技術者や専門職ではなく、単純軽作業の日雇い派遣である。つまり、日雇いから手数料をピンハネする「口入れ屋」の世界だ。ワーキングプアの温床とされる日雇い派遣は、「格差」を象徴するものとして、派遣のあり方など労働者派遣法改正の検討が進められてきた。
労働者派遣法は、派遣労働者の安全や雇用管理の問題、端的に言えば、手配師の資金源になりやすいことから、港湾運送業務、建設業務、警備業務への派遣を禁じている。しかし、違法派遣が常態化しているのが実情だ。
「グッドウィルにも違法派遣の疑惑」。厚労省を動かしたのは、『週刊東洋経済』(2007年8月25日号)が報じたこの記事だった。記事は、以下のような内容。
グッドウィルから三井倉庫(東京都港区)に派遣された男性(27)が07年2月、作業中に荷崩れに巻き込まれ足を骨折する重傷を負った。この事故は、日雇い派遣業界の暗部を明るみに出した。
その1つは、「データ装備費」名目で200円を天引きしていた問題。グットウィルは、データ装備費を「業務上の事故に備えた安全共済の掛け金」と説明していたが、男性には安全共済の保険金は支払われなかった。
もう1つは、複雑な雇用関係。男性は、人材派遣会社の東和リースに派遣されたことになっていたが、実際に働いたのは三井倉庫の現場で、しかも仕事の指示は港湾業者の笹田組(横浜市)だった。
同誌は、「グッドウィルは港湾業務という禁止業務への派遣に加え、職業安定法違反の二重派遣まで行なっていた」と告発した。
問題を重視した厚労省は、調査に乗り出した。結果、他にも二重派遣があったり、法で配置が義務づけられている派遣元責任者が不在の事業所などが複数あったりしたことが分かった。これまでにも、建設業への労働者派遣で事業改善命令を受けており、今回、複数の法令違反が判明したことから重い処分となった。
つづく