2008年の注目社長(上)
2008年。新日本製鐵の三村明夫社長(67)は、M&A(合併・買収)戦略の最大のヤマ場を迎える。世界首位のアルセロール・ミタル(ルクセンブルグ)の買収の脅威に対抗して、国内外で提携を進めてきた防衛策の総仕上げが、住友金属工業、神戸製鋼所との経営統合であるためだ。
統合の布石か
新日鐵、住金、神鋼の高炉3社は07年12月19日、相互に株式を追加取得すると発表した。新日鐵と住金は1,000億円ずつ株式を取得し、事業会社としてそれぞれが筆頭株主となる。
3社は、08年3月末までに市場で株式を取得。新日鐵の住金への出資比率は5%から9.4%に高まり、現在の筆頭株主である7.5%の住友商事を抜く。住金の新日鐵への出資比率も1.8%から4.1%になり、3.5%の韓国ポスコを抜いて事業会社として筆頭株主になる。
新日鐵と神鋼、住金と神鋼もそれぞれ150億円ずつ株式を追加取得。神鋼への出資比率は新日鐵、住金ともに3.4%になる。
「いよいよ新日鐵が3社統合に向けて動き出した」。業界は色めきたった。
最大の注目点は、新日鐵が住金の筆頭株主になることだ。
住金は住友グループの中核で、住友商事が7.5%を保有する筆頭株主。02年に資本提携に踏み切ったことで、新日鐵は現在、5.0%を保有する第3位の株主だった。持ち合いを強化した結果、新日鐵が9.4%になり、住商を抜いて筆頭株主に躍り出るのである。
三井住友銀行が信託口で1.8%、住友信託銀行が1.7%保有しており、住商分と合わせると11.0%。住友グループの一角にとどまるとはいえ、筆頭株主の座を明け渡すことの意味は大きい。
半ば全面統合を諦めていた新日鐵にとって、JFEを突き放し、アルセロール・ミタルへの対抗軸を構築する絶好のチャンスだ。新日鐵が住金の筆頭株主になることで、3社の合併・統合は秒読み段階に入ったといえる。
統合に向けて動いたのは前門の虎(鉄鋼最大手のアルセロール・ミタル)、後門の狼(資源最大手のBHPビリトン)の脅威だった。
つづく