今年初め、松下電器が「パナソニック」に社名変更するというニュースが伝えられた。PANは「すべて」を表す。SONICは「音」意味する。それを合成したのがパナソニックである。
1955年、輸出用のスピーカーを初めてパナソニックというブランドで輸出した。「松下の音の世界」に対する思いがこもっていた。松下経営陣にすれば、「経営の神様」といわれた、創業者松下幸之助を乗り越えようするのは並大抵ではない。激しい競争にさらされる世界市場にあって、輸出産業が創業神話に縛られていては生き残れない。成長の柱を海外と位置づけて、松下、ナショナルのブランドが海外では思うように定着してないという危機感があったのだろう。NO28で前述したように、当時の松下の中村社長が大規模な改革を推進していたが創業家の影響力も薄らぎ、難しい神話との決別を遂に決断したのであった。
積水ハウスも神話の中にいるのではないだろうか。日本経済は「失われた10年」の後もなお、停滞を続けている。戦後の成長神話に縛られ、変革に踏み切れないでいるように見える。積水ハウスも同様、田鍋神話を抜け出せないでいるようだ。右肩上がりで30年以上も成長を続けていたため、挫折感を経験してない現経営陣が、あたかも、自分の能力、努力で成功したかのごとく思い込み、変革なしに、従来の経営方針のままでやれると判断しているなら、大和ハウスに益々差をつけられるだろう。住宅を取り巻く情勢は大きく変化している。
1億総中流意識を持っていた時代には、全国各地で住宅が飛ぶように売れていた。現在は、富裕層はますます富み、中流以下はますます貧困へ落ち込み、中流層が少なくなり、格差は増大している。少子化も進行している。住宅が、富裕層のいる大都会を除いて、特に地方では簡単に売れる時代ではないのである。過去の神話は捨て去り、新たな改革を実行しなければ、生き残れないと、早く気づくべきである。トップへの気遣いなど、内向きの経営でなく、外へ向かう経営に、早急に転換すべきではないだろうか。
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