常連企業の面々
07年3月期に続きリスク情報を開示している企業は、東証31社、ジャスダック20社の合計51社。財務内容の改善は進んでいない。経営再建中の三洋電機、三菱自動車工業、日立造船、不二家、商工ローンのロプロ(旧・日栄)、格安エアラインのスカイマークが引き続き「継続企業の前提に重要な疑義が存在する」との注記を開示した。
三洋電機は、過去の決算で子会社株式の評価損を過少計上する不正な処理をしていた問題で、01年3月期から06年3月期までの決算を訂正。三洋がこの間に実施した総額約280億円の配当は、違法配当だったと認めた。
監査法人が、継続企業の前提に「疑義」を指摘しているのは、巨額赤字のほかに、金融機関の協調融資に財務制限条項が付いている点。格付け会社の格付けが「BBBマイナス」以上を維持することが義務づけられており、それより低い格付けに下げられた場合は、契約期限よりも早く返済を迫られることになる。格付け会社が、三洋の生殺与奪権を握っている格好だ。
三菱自動車は、最終損益が引き続き赤字だったことが理由。ただし、営業利益、経常利益は黒字に転換しており、再生計画の最終年度となる今期の目標である「黒字体質」に大きく改善したとしている。
不二家の07年9月中間期の連結決算は、売上高は前年同期比40.3%減の225億円で、営業利益、経常利益、当期利益とも大幅な赤字。洋菓子に消費期限切れの原材料を使用していた問題で、顧客や小売店が離れた影響が大きかった。監査法人は、赤字になったことのほかに、営業キャッシュフロー(現金収入)が大幅なマイナスになった点も「疑義」の理由にあげている。スカイマークも営業キャッシュフローの大幅なマイナスが、「疑義」の理由だ。
日立造船は当期利益を計上したが、利益水準が低いことが理由になっている。
商工ローンのロプロは巨額の赤字。灰色金利問題で、日本公認会計士協会の指針に従い、灰色金利で貸し付けた顧客からの利息返還に備え、引当金113億円を特別損失に計上したことが赤字の理由だ。
マザーズ上場の投資会社オーベン(旧アイ・シー・エフ)は、朝鮮総連本部の土地・建物の仮装売買事件をめぐり、詐欺容疑で逮捕された緒方重威・元公安調査庁長官が監査役を務めていたことで話題になった。
二極化が鮮明に
リスク情報の記載をやめた企業は、東証が4社、ジャスダック2社の6社。オリエントコーポレーションなどが財務体質の改善を理由に記載を外した。
リスク情報を開示する企業の数は、東証の場合、開示制度がスタートした03年3月期の33社をピークに05年9月中間期には17社へ減ったものの、06年9月中間期から増加に転じ、07年9月中間期は38社を記録した。
同期は高業績をあげた企業が相次いだが、その一方で、リスク開示する企業も大幅に増えた。企業業績の「二極化」が一段と鮮明になった。
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