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積水ハウスの興亡史 (45) 積水ハウスは上昇なるか | 愛する積水シリーズ
特別取材
2008年1月31日 16:50

 1960年代を中心に70年代と、日本経済は高度成長時代を迎えていた、それと呼応するように、積水ハウスも高度成長を続けていた。
 戦後、日本には「格差のない豊かさ」という歴史の例外を生み出した。このことは日本人として誇りに思って良いことだ。

理由は
1.累進所得税であった。高額所得者は所得の75%を税に取られていた。国による所得の再配分は大規模であった。
2.春闘方式。トップの企業が労使が徹夜で交渉しベースアップを決め、それに準じ、中小企業はストを打つこともなく、アップ率を決め、中小の労働者も毎年所得の上昇があった。
3.農業への手厚い保護政策をとっていた。世界の例では工業化が進むと、農業の貧困化が伴うが、日本では生じなかった。

こうしたことから、1億総中流意識が国民に育まれていったのだと思う。
現和田社長はそのような時代背景の最中であった1965年、一営業マンとして名古屋営業所に新入社員として着任した。そこでの和田の活躍はすばらしいものがあり、当時営業マンは全国に100名もいなかったとは言え、常にトップの成績を残していた。大きな挫折もなく、店長、所長、営業本部長、西日本統括本部長、社長とトントン拍子に出世街道を歩いてきたのだ。

 安部を次期社長に指名したのも、自分と符合するものを見たのかも知れない。失われた10年を抜け出して、グローバル企業の中で、指導力を発揮して、再生を図ったのは前述したように、松下電器、トヨタ、キャノンである。松下の中村会長、トヨタの奥田会長、キャノンの御手洗会長、三人に共通するのはその企業の本流を歩く本社エリートでなく、海外勤務で修羅場を経験した異端の人材であった。本社の慣行、組織のしがらみなしに、聖域なしの改革を断行できたのであった。

 そんなグローバル企業の経営者と比べ、積水ハウスが住宅業界2位に落ちたことに対する巻き返しのビジョンが見えてこない。構造改革も見えてこない。新社長を安部にすることが、人心一新、改革の一歩なのかも知れない。しかし、和田がCEOという新たな役職に就任することは、従来と変わらず経営全般を見るということだろう。

 これを市場はどう評価するのか。改革と見るのか、改革のやる気なしと見るのだろうか。衰退していった企業は、経営者の過去の成功体験への固執、危機意識のなさ、経営者の不作為などが改革を遅らせ、低迷を続けていることが多い。

 今こそ、積水ハウスの経営者は権限と責任を自覚し、競争力強化に全力を挙げて欲しいものだ。(文中敬称略)

野口孫子


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