1月18日に開幕した通常国会で福田内閣はいきなり正念場を迎えている。自民党内では「3月総辞職説」がまことしやかに語られ、各派は早くも総裁選の準備を始めた。
《前門の虎》はいうまでもなくガソリン税の暫定税率廃止を掲げる小沢民主党だ。議員60人のキャラバン隊を編成して全国行脚を開始し、「ガソリン値下げ」を争点に解散・総選挙に追い込む構えだ。
福田首相のお膝元の町村派幹部さえこう見ている。
「予算関連法案が3月末までに成立しなければ、ガソリンの暫定税率は一時廃止され、価格も下がる。そうなった後に、与党が衆院の3分の2で関連法案を強引に再可決すると野党は問責決議を行い、福田首相は解散を迫られる。しかし、自民党内のほとんどはガソリン引き下げを争点に勝ち目のない選挙を戦うより、福田内閣の総辞職と引き換えに関連法案の修正可決という道を選ぶしかないと考えている」
与党内は解散時期を早くても洞爺湖サミット(7月)を終えた今年秋以降に先送りすることを絶対条件にしており、もともと安倍退陣による「暫定政権」の性格が強い福田首相は事実上、解散権を与えられていないに等しい。
◆政界再編をにらむ山拓の布石
自民党各派は薬害肝炎問題と「消えた年金」問題解決の公約違反で福田内閣の支持率が急降下した昨年末から、「この政権は長くない」と見切りをつけ、ポスト福田に向けた総裁選の準備に走り出した。
古賀誠・選対委員長と谷垣禎一・政調会長が当初5月に予定していた派閥(宏池会)合流を通常国会前に前倒ししたのも、「この国会で政権交代がありうる」(同派幹部)と判断したからだ。これで古賀氏は谷垣氏という総裁候補を担ぐ態勢を整えた。
山崎拓・元副総裁も有力な次期総裁候補を握った。昨年12月に山崎派入りした若手リーダーの一人、石原伸晃だ。石原氏は行革担当大臣、元国土交通大臣、政調会長を歴任し、若手の中ではピカ一のキャリアを持つが、旧加藤派を離脱して無派閥だっただけに、これまでは総裁選に立つチャンスがなかった。
それが山崎派40人の勢力をバックにつけたことで、いつでも総裁選に出馬できる。山崎氏側近はいう。
「石原入会は後援会長で山崎氏と近い氏家齊一郎・日本テレビ会長が仲介した。氏家氏は渡辺恒雄・読売新聞グループ会長とともに自民、民主大連立構想に関わったとされる人物であり、伸晃も民主党若手幹部と太いパイプを持つ。その意味で山崎氏の石原スカウトは総選挙後の連立や政界再編をにらんだ布石だ」
◆麻生は派閥分断作戦に活路
昨年の総裁選で大健闘し、ポスト福田の”本命”と見られている麻生太郎・前幹事長はもちろん虎視眈々と「次」を見据えているものの、前回とは情勢がかなり違ってきた。
古賀派と谷垣派の合流によって古巣の宏池会議員からの麻生支持は難しくなった上、石原氏が出馬すれば、若手の票を奪われかねないからだ。
その麻生氏の最後の手段は各派の分断作戦しかない。
「山崎派が石原を擁立したら甘利明・経済産業大臣が反発して派を割り、こっちにつく。麻生さんは他にも伊吹派会長代理の中川昭一・元政調会長、津島派の鳩山邦夫・法務大臣、古賀派は菅義偉・元総務大臣という各派の最高幹部を味方にしている。次の総裁選では、自民党の派閥がバラバラになって戦うことになる」(麻生側近)
こうした情勢を渡辺喜美・行革担当大臣は、
「自民党が液状化してきた」と言い抜いた。