トータルカーケア事業へ
日本経済の上昇とともに石油業界も右肩上がりの時代であった。すでに70年代後半から石油元売りの「代理戦争」へ突入していた。元売りからは「ボリュームインセンティヴや販売促進費補助、期末決算で調整するから」という露骨な販売量確保が指導され、業界全体が踊らされた。その結果、商社系列の勢力が増大する傍ら、元売り主導による企業の再編と淘汰が進行中であった。当時から「これはおかしい」と感じていた氏は、こうした時代だからこそ、SSの原点に立ち返った経営と業容が必要であることを強く意識することになる。「トータルカーケア」として事業を発展させることがこの危機を乗り越えるカギであると。カーメンテナンス(洗車や車検整備)を入り口にして、車の販売までの車関連事業を展開していくことになる。
自動車業界の中で最も来客頻度が高いのはSSである。燃料補給の機会が、必ず月に数回あり、お客様と直接面談する。そこでサービスを充実させ、車メンテナンスや買い替えの相談まで行なうことにより、次のビジネスに繋げていこうという狙いがあった。
もちろん、薄利多売の石油販売にプラスして利益が出る収益業容を生みだすことで、経営の安定を図るためであった。事業展開は順調に進み、中古車、新車、外車販売へと拡がっていった。販売部門を分社化し「サムシング」として実弟がその経営に当たることになっていった。こうした多角事業を展開するに従い、人材の確保と育成が経営者として重要な課題になっていく。スタッフを揃えることは大変なことであった。特にバブル期にはなかなか人材が集まらない。採用してもすぐに辞める。こうしたなかでメンタルケアを重視した人材教育が否応なく迫られ、創造的な教育を行っていった。この経験が今日に生きている、と氏は述懐する。
[プロフィール]
高木 教光 (タカキ キョウコウ)
NPO法人 キャリア教育サポート 専務理事
九州産業大学 非常勤講師
1951年 福岡市博多区生まれ
1972年 九州産業大学 産業経営学部 卒業
NPO法人キャリア教育サポートを設立 地場企業の経営者と教育界の方々との連携を行い、青少年の健全育成と地場企業への就職支援事業、教育事業やイベントを開催 福岡地区の大学生の自立と 起業支援事業を行う。
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