欧州で事例を探すと、オランダのランドシュタットというエリアがある。人口550万人で、今、欧州でもっとも経済力のあるエリアとされている。中央にスキポール空港があり、アムステルダムにも、ロッテルダムにも、15分程度で移動できるという交通の利便性を有している。しかも、欧州で最大のロッテルダム港、第4位のアムステルダム港もあり、EU全体の入口となっている。横浜よりもはるかに小さい都市が密接につながることによって、地域ポテンシャルを高めている。
もう一つのケースは、ルールゲビートという、ライン川下流にあるエリアである。このエリアも、約20ある自治体を全部合わせると560万人程度の人口であり、欧州の中ではロンドン、パリに匹敵する経済力を持ち、また成長し続けている。注目すべきは、ひとつひとつは小さな町だが、横につながることで大都市とほぼ同じ経済力を持つことができるということである。ヨーロッパの場合、人口20~30万人の都市でも、空港で他国の約30の都市と結び付くことが当たり前になっているのだ。こういった「上手なつながり方」は、日本においてもおおいに参考とすべきではないだろうか。
日本はすでに都市型社会になっており、政令都市と1時間、中核都市、人口10万人以上の都市と30分以内に特急や高速道路を使わないで行くことができる場合に、その2つのエリアは連携しているとみなすと、すでに日本は82の都市地域の中に組み込まれ、このなかに、自治体のおよそ70%、人口の92%、GDPの94%が含まれる。また、人々の移動を実証的データで見ると、8つの地域に分かれ、人々の流れが新しい方向に変わりつつある。例えば、山口県は明らかに北九州エリアと結び付き、北陸3県は人・物の移動は完全に大阪圏、鳥取県は境港まで大阪圏になっている。
北九州市も、新北九州空港を有するだけでなく、新しい港湾も整備しており、新幹線と高速道路で横に5つの町がつながるシステムを構築している。横に中核の都市を上手く結び付けることにより、経済のポテンシャルを上げ、地域の人にとって一番都合の良いかたちに持っていこうとしている。
目を海外に向けてみると、福岡都市圏の「対岸」にある都市として、韓国・釜山市(350万)、中国・大連市(560万)がある。これに福岡市、北九州市、長崎市の人口を加えれば、ゆうに1,000万人は超える。福岡対岸の諸都市との「つながり」を深めることができれば、ランドシュタットやルールゲビート以上のポテンシャルを秘めている地域だと考えることができる。その地域の「拠点」たらんとするならば、「空港」の整備のあり方が重要である。
「二層の広域連携」の意味は、地域の一人ひとりの活動が、生産性向上につながるように地域のユニットを明確にし、東京でしかできないと思われていた国際化も実現しながら、地域のなかで自立できる経済システムを考え、それを金融、交通、物流の面からバックアップし、日本全体がそういう都市の連携の組合せででき上がっていることであり、今後の「空港」の整備のあり方は、そのコンセプトに基づいて行なっていくべきだろう。
つづく
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