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特別取材

「共育」が紡ぐ組織、そして社会(12) | 人生のエナジー
特別取材
2008年2月13日 10:29

苦悩の日々


 トップには苦労がつきものである。高木氏を大きく苦しめたのは、第1に銀行との関係である。父親が作ってきた信用を潰すわけにはいかない。信用力を高めるために「経営計画書」を作成し、銀行に提出。つぶさに事業の現状と将来性を示し、銀行に承諾して頂くのは大きな仕事であった。

 第2は、№2を育成していくことであった。元売りからの出向者がその任に当たってくれていたが急死し、その後任をしっかりと固めることができなかった。これがのちに氏を苦しめ、事業の危機を回避できなかったことに大きな要因のひとつにもなっていく。

 第3は、人材の確保と育成である。SSは「3K」というイメージから脱することができない職場であった。氏にとってどうしても忘れることができない話がある。当時、高校卒業者を定期採用していたが、その子がつぎのように言った。「高校の先生から『勉強せんとSSにやるぞ』と言われた」と。その子は氏に真剣に尋ねた。「どういう意味ですか」。先生にしてみれば、SSは1ランク下の職場だとの考えであったろう。氏はその子に伝えた。「SSがなければ車は走らないよ。産業と生活の基盤の仕事をしているんだ」と自分の仕事に誇りをもって働くことの大切さを言いたかったのだ。と同時に歯痒い思いが胸に突き刺さったのである。

 高度成長期には、多くの人が「楽に金が手に入る」職場に行く。またせっかく採用しても、長続きせず、自分が育てた人材が他所に引き抜かれたりする状況があった。福岡にはすばらしい会社があることをもっと知ってもらいたいという思いと、「目先の華やかな仕事や大企業・名前がよく知られた会社に行きたがる」人たちの意識を変えていかねばならないという悲痛な気持ちが新たな決意に変化していくにはもう少し時間が経過してからのことである。


  
[プロフィール]
高木 教光 (タカキ キョウコウ)                    
NPO法人 キャリア教育サポート 専務理事
九州産業大学 非常勤講師
1951年 福岡市博多区生まれ
1972年 九州産業大学 産業経営学部 卒業

NPO法人キャリア教育サポートを設立 地場企業の経営者と教育界の方々との連携を行い、青少年の健全育成と地場企業への就職支援事業、教育事業やイベントを開催 福岡地区の大学生の自立と 起業支援事業を行う。 


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