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特別取材

「共育」が紡ぐ組織、そして社会(14) | 人生のエナジー
特別取材
2008年2月15日 10:52

デッドラインの見える前に 


 当時、高木氏の妻は4人の子どもを残して家出をしている状態であった。父親の「まず体を治せ、子どもたちを守るためにも治療に専念せんと」という涙ながらの一言が社長辞任の決め手だったと述懐する。

 ガソリンスタンド業界は、96年から規制緩和による「セルフ・スタンド」の登場でさらに価格競争が激しくなっていた。収益を確保するのが非常に困難な状況に陥り、年商18億円規模の事業を展開していた高木石油も前述のような措置を取ることで組織としての存続を図ってはきていた。

 しかし、トップ・リーダーのいない会社は、将来展望はもちろん現状維持すら困難である。01年1月、ついに事業の解散の道を選ぶことになる。トップとして、この判断を取らざるを得ない苦渋は本人にしかわからないことだろう。トップの引き際にこそ、経営者、そして人としての真価が問われる。判断を誤ると大変なことになる。息も抜けない緊張した日々が続く。

氏の判断は、「これ以上事業を継続したら整理の付けようがない」というデッドラインの手前で、思い切った決断をすることだった。気持ちはただひとつ、いかにこのビジネスを「最善のかたち」で終わらせるかであった。そのためには、これまでお世話になった銀行や取引業者に最大限尽くすことである。一切の土地・建物を売却し銀行への返済にあて、債権者へ無理を聞いてもらって債権のカットをお願いし、了承を得ることが出来たという。またこれまで苦楽を共にしてきた従業員の再就職も成し遂げた。

 これまで築いてきた信用が音を立てて崩れていくのを身にしみて感じながらも、支援や協力をしてくれた人たちの気持ちに、今後の生き様のなかで応えていかねば、という「矜持」がもたげてきたのも確かであった。しかし、何といってもそれをやり抜く、気力と体力の回復―病気との闘いが先決問題であった。


 
[プロフィール]
高木 教光 (タカキ キョウコウ)                    
NPO法人 キャリア教育サポート 専務理事
九州産業大学 非常勤講師
1951年 福岡市博多区生まれ
1972年 九州産業大学 産業経営学部 卒業

NPO法人キャリア教育サポートを設立 地場企業の経営者と教育界の方々との連携を行い、青少年の健全育成と地場企業への就職支援事業、教育事業やイベントを開催 福岡地区の大学生の自立と 起業支援事業を行う。 


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