番組を通じた「経世済民」を
経済ジャーナリズムからみた福岡への提言
「経済をもって九州を元気にする」番組作り
毎週土曜朝9時からの「九州経済NOW」でお馴染みの加地良光氏。九州版のWBS(ワールドビジネスサテライト)を目指し「経済をもって九州を元気にする」番組作りを心がける。
「TVQは、少数精鋭でやっているため、どうしても報道が弱い部分があります。日経新聞の系列でもあるので、特色を出すためにも『経済番組』をやろうと。ネタがあるのかという不安もあったが、そこはチャレンジしようと。
正直、視聴率は苦戦しています。土曜の朝9時という時間帯でもありますし。ただ、それでも確かな反響はあります。行政関係の方も観て頂いているようですし、返ってくる反応は悪くない。
テレビに携わる者としては、視聴率が気にならないかといえばウソになりますが、敢えて数字を取りに行くという番組作りよりは、トレンドを抑えつつも、しっかりと消費者、利用者サイドにたった番組作りを心がけています。企業情報を紹介して、企業に喜んでもらうのではなく、あくまで経済ジャーナリズムを追求していきたいですね。『経済』の語源は『経世済民』といいますから。」
歴史や中国古典が趣味だという加地氏。「座右の銘は『知行合一』陽明学の開祖・王陽明先生のお言葉です。放送の世界は、放送しっぱなし、アナウンサーはしゃべりっぱなしになりがちです。『偉そうなこと言っているけど、何かやってるの』という問いが必ずあると思っています。言うだけでなく、行動が伴っているかが問われるし、自らも問うていきたい。」
アナウンサーという仕事だけでなく、地元での高齢者の認知症予防のボランティア活動にも精を出すそうだ。
福岡への提言
取材を通じて、経済というフィルターを通して福岡をどうみるのだろうか。「景気がいいとは言いますが、中小企業が元気だという声は聞こえてはこないですね。福岡の経済は九電さんをはじめとする『大手』が抑えていて、その人達が何かしてくれないとみんなが動けない。安定した構造とも言えるのかもしれないけれど、そこから飛び出して何かやろう、という動きが生まれにくいという感じはしますね。
もう一つは、『街の深み』がないということ。適度に都会で、住みやすいとは思うけれど『ミニ東京』に留まっていると思う。もっと深みが欲しい。東京から来た人を何処へ連れて行くかといえば、太宰府や柳川まで足を伸ばす。ドームやタワーは、東京にもあるからだ。食事も美味しいし、一晩楽しむにはいいけど、本当の意味での「迎える力」が足りないのでは。
東京はお金さえがあれば楽しめる文化。九州の文化は自然であったり、文化であったり、その人に知識や感性がないと楽しめない「人間が問われる文化」であるはずなのに、中途半端に『ミニ東京』化したせいか、街の浅さが見えてしまう。福岡の次の発展を考えるにはそこを改善したうえで、しっかり発信していくことも考えていくことでしょうね。」
加地氏の提言は示唆に富むものだ。こういう視点、意見を受け入れる「度量」があるかどうか。現状維持に留まるか、それとも新しい福岡の在り方にチャレンジするのか。加地氏の座右の銘である『知行合一』が求められているのは福岡自身なのかもしれない。
[プロフィール]
加地良光(かぢ りょうこう)
1964年 東京生まれ
1988年 埼玉大学卒、NBC長崎放送入社。
1998年 TVQに移籍。
現在は「九州経済NOW」、「TVQスーパースタジアム」 、「速ホゥ!FUKUOKA」などを担当。ブログ「加地アナの感度リョーコー」(http://www.tvq.co.jp/ana/kaji/)も執筆。
会社:〒812-8570 福岡市博多区住吉2-3-1
TEL:092-262-0019(代表)
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